Fox Hole(狐の穴)

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2021年4月30日更新

城山稲荷神社のFox Hole(松江市殿町449-2)小泉八雲もこのFox Holeを見たに違いない。

 「狐の穴」について書いたのは2017年だったと思う。稲荷の社の裏に狐が出入りできる穴があいているのだ。
 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)はおおよそ100年前にこのことに気づいた。『新編 日本の面影Ⅱ』(池田雅之訳・KADOKAWA)にはこんな具合に書かれている。
 「さて、稲荷神社の社殿の裏手の壁には、たいてい、地面から数十センチのところに、直径二センチほどの楕円か円形の穴が開いているのを見かける。引き戸で、自由に開け閉めできるようになっている場合も多い。この丸い穴は狐の穴で、開けて中をのぞくと、豆腐などの狐の好物とされる食物がお供えしてある。穴の下や穴の近くの木製の小さな出っ張りの上や、穴の端に米粒が蒔かれてあったりする」。この話は『神々の国の首都』(平川祐弘編・講談社)にも収録されている。

稲荷神社(長浜市宮前町)

 この穴、八雲は自分が観た光景からFox Holeと記したのだろう。日本古来の正式名称があるのかどうかも今のところわからない。だから僕らも「狐の穴」ではなく「Fox Hole」と呼ぶことにする。
 八雲は、「狐の像は地方よりも出雲の方がその数は多いようで」と記している。松江城がある城山公園内に城山稲荷神社があり、八雲が散策した頃には数千もの石狐があったという。実際に訪れると八雲の記述にも納得がいく。
 僕が彦根に稲荷の社が多いことに気づいたのは2016年のことだった。井伊家菩提寺の清凉寺にある長林稲荷。また、中薮組足軽屋敷の中にある花山稲荷、松原の瘡守稲荷はかつては彦根城内にあった。その他、雨壺山の岡山高松稲荷、三高稲荷など、特別な名がある稲荷が彦根市には存在する。「彦根の城下町は稲荷密度が他より高いのではないか」と書いた。八雲は松江は狐の像が地方より多いといい、僕は稲荷の社が彦根には多いと思った。100年前の八雲のような気分だった。

飯開神社の稲荷社(長浜市湖北町)

 そして2017年以来、赤い鳥居を見つけるとできる限り立ち寄り、社の裏へまわりFox Holeを確認するようにしている。
 何故、稲荷の社の裏にFox Holeがあるのか……、稲荷神の使いである狐に願いを届けてもらおうとしたのだろう。その理由は忘れられているようだが、近江の稲荷の社には今も穴があいている。
 今回は2つの稲荷を紹介しておく。
 ひとつは、長浜の大通寺近くにある稲荷神社(長浜市宮前町5‐1)。鳥居を配し穴を設けてある。おそらくこのカタチが正式なものだろう。

飯開神社の稲荷社(長浜市湖北町)

 もうひとつは、飯開神社(長浜市湖北町延勝寺1251)。Fox Holeが2つある社に出会ったのは初めてである。八雲も見たことはないだろう……とドキドキした。しかも、社は雪囲いで二重になっているのだが、外側にもちゃんと2つの穴があいているところがいい。何故、飯開神社の稲荷社には2つの穴が設けられたのか……、今のところ、これといった仮説も思いつかないでいる。ぜひ知りたいものである。

 ところで、僕は松江の城山稲荷神社で本殿のFox Holeを確かめたが、伏見稲荷大社(京都市)や千代保稲荷神社(岐阜県海津市)など近隣のメジャーな稲荷社を訪れていない。Fox Holeは存在するのだろうか。ゴールデンウィークに出かけたいのだが……。

小太郎

スポンサーリンク
関連キーワード