暮らしの中に生きていた「おまじない」
新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。もやもやとしたものが気持ちのなかにある。これが不安というものだろう。もやもやの密度が濃くなり我慢していると、圧縮されてギャーっと爆発して吐き出すことになる。
お守りやまじないは不安を和らげる速攻性のアイテムである。僕は未だにお守りを首からさげているし、いくつかの真言も覚えている。人からは「気持ちが弱い」と言われたこともあるが、誰にも迷惑をかけていないので弱くてもいいし、お守りや真言のおかげで強くなれるならそれでいいと思っている。
少し前までは、暮らしの中に多くの「おまじない」が生きていた。まじないのない世の中は言い換えれば不安のない暮らしに恵まれているということだ。不安が和らげば「ちちんぷいぷい」でも「なーままにざばやんぷーにゃん」でもいい。
玄関に「南天」を植えている家が多いのは、「難転」からだろう。病の侵入を防ぐ意味もあるらしい。子どもの伝染性の病気(麻疹・疱瘡・流行性感冒など)が流行りだすと、南天の細木を3センチほどひょうたんのように中くびれに削って糸でくくり、着物の後ろ襟の下あたりに吊しておいたという。南天なら僕の家にもあるので、細木をお守りの中に入れることにした。
子どもだけでなく一人でも多くの人が南天まじないを思い出せば、注意や警戒をヒステリックに叫ぶこともなくなるのではないだろうか。
お洒落なお守り袋が欲しくなった……。
【小太郎】