最北、淀川の源
琵琶湖から流れ出る唯一の河川として知られる瀬田川は、宇治川、淀川と名前を変え、京都、大阪を潤し瀬戸内海に注いでいる。実はこの川の源が余呉にある。
余呉町を縦断するように走る国道365号をひたすら北上すると、余呉高原スキー場が見えてくる。このあたりは栃ノ木峠と呼ばれ、峠の向こうは福井県だ。国道を挟んでスキー場のちょうど反対側、路肩付近に「淀川の源」と記された石碑がある。
余呉町建設農林課に尋ねてみた。「淀川の源とはつまり高時川のことで、高時川の起点がここにあることを指している。高時川は旧びわ町で姉川と合流し、琵琶湖に注ぐ。琵琶湖を河川の一部と考えれば、淀川の源になる」というのだ。
もちろん、高時川だけが淀川の源流ではない。滋賀県の山間部や京都北部から流れ込む川も源流に数えることができる。そのなかで、最北端に位置するのが高時川なのである。
石碑そばに水の流れはないが、ゴーッという清冽な水の音が聞こえる。峠からいくつもの谷川が集まり高時川が始まるのだが、その場所はスキー場のあたりなのだという。
石碑から少し下手にある橋の下に小さな流れがあった。「淀川の源に限りなく近い場所」である。この橋もまた淀川の最北端の橋である。
この栃ノ木峠は分水嶺である。分水嶺とは水の境界のこと。ここを境にして日本海側と太平洋側に注ぎ出る水に分かれるのだ…。源が病めば、どうなるかくらいは、私にも予想はついた。
近畿の水瓶、琵琶湖……。その最北の源。真夏だというのにセミの声はなく、鳥のさえずりと勢いのいい水の音ばかりが届いていた。
「淀川の源」石碑
栃ノ木峠の手前、余呉高原スキー場の道を挟んだ反対側に「淀川の源」の石碑がある。
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【椰子】