森の恵み「ながはま森のメープル」
長浜産のメープルシロップ「ながはま森のメープル」(20g入り、1,500円)が、道の駅・塩津海道あぢかまの里(長浜市西浅井町塩津浜)で販売されている。メープルシロップはカナダ産が良く知られ、サトウカエデの樹液から作られる。日本国内にはサトウカエデは自生しておらず、ながはま森のメープルはウリハダカエデとイタヤカエデの樹液から作られている。その工程を知ると、なんだか楽しそうだったり、ご苦労だったりが感じられ、素敵な〝森の恵み〟だとわかる。
メープルウオーターとも呼ばれる樹液の採取場所は、旧西浅井町内の山門水源の森と集福寺の山中など。樹齢20年以上、胸高直径が20cm以上のカエデの樹に1か所穴をあけ、タンクを設置して樹液を集める。タンクは1月下旬に設置、1週間に1回程度、タンクに溜まった樹液を採取し、これを煮詰めるとメープルシロップになる。
この取り組みは、ながはま森林マッチングセンターの橋本勘さんを中心に2018年スタート。今年はメープル部会としてメンバーが集い、タンクの設置から樹液採取、シュガーリング(煮詰める)などを行っている。一般向けには森歩きを楽しみながら樹液採取や試飲ができるエコツアー〝メープルトレッキング〟が開催されている。
カエデはなぜ甘い樹液を作るのか? どこでも樹液の採取ができるわけではなく、夜間には氷点下、日中5℃以上になる寒暖差が必要など、植物(ここはカエデだ)の不思議や面白さを教わる。また、20mLのシロップを作るために約1Lの樹液が必要で、煮詰めることで糖度は約1.2パーセントから約60パーセントまで上がり、ミネラル分なども多く含まれる。橋本さんから丁寧な解説を聞くのは楽しく、植物の知識が増えることはなんだか豊かな気分になる。樹液採取で森歩きをすれば、雪景色や冬の植物観察が楽しめ、心地よい疲れも悪くない。面白くて、充実感もあって、いい活動だなあとつくづく思う。
橋本さんは「カエデが巨木化したのは人が山に入らなくなったからですが、この活動でまた人が山に関心を持ち、山へ入っていく機会が増えれば」と話す。厳冬期に限られた活動は、2月いっぱいで樹液採取は終了。メープル部会の活動では、3月10日にカエデの植樹が計画されており、興味のある方はながはま森林マッチングセンター(0749-82-5070)へ問い合わせれば活動に参加できる。
橋本さんは、「足を運べなくても思いを馳せることが人と森との結びつきを深める」と言われたが、行ってみて経験したことが思いを馳せるための情報量を増やしてくれる気もする。
同センターでは、長浜市北部地域で樹液採取ができるカエデの情報も求めておられる。山林所有者の方など、「この樹は使えそう」と思われたら連絡を。樹液採取によって樹に大きなダメージを与えることはないそうだ。
※文中で行うシュガーリングは、体験として行われるもので、あぢかまの里で販売されているながはま森のメープルは、販売元の西浅井総合サービスが衛生管理の整った施設でシュガーリングを行っています。
【編集部】