戦国武将とSDGs

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 2021年1月8日更新

 彦根ヒストリア講座のテーマは、「講談で生き様を! 講義で思想・政策・業績を! そして、SDGs分析で天下人となれなかった理由を探る」。SDGsで武将を分析する思考実験は滋賀大学経済学部教授小野善生氏が担当。講談は、古典から創作まで幅広く語り聞かせる上方講談師の旭堂南海師による。「神になれなかった近江の強者たち」と題して、今までに明智光秀・京極高次・藤堂高虎・織田信長・蒲生氏郷・片桐且元・石田三成にスポットをあてた講座が開催された。ユニークなのはSDGs分析。エス・ディー・ジーズは最近よく耳にする言葉である。Sustainable Development Goalsの略で「持続可能な開発目標」と訳されている。GsはGoalsの略。第70回国連総会(2015年9月25日に開催)で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の文書の中に登場する(アジェンダは戦略や行動計画という意味)。つまり、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標である。
 具体的には、 1. 貧困をなくそう 2. 飢餓をゼロに 3. すべての人に健康と福祉を 4. 質の高い教育をみんなに、など17の目標がある。
 2030年までの目標を、戦国時代の武将の業績に置き換えて考えてみようというのである。小野教授の分析によれば、例えば石田三成の領国経営能力は高く評価されている。その内容がよくわかる資料が、十三ヶ条と九ヶ条の掟書だ。十三ヶ条は三成自身の所領、九ヶ条は家臣の所領に出されたもので、内容的には大きな違いはない。掟書は当時のものとしては長文で、村の戸数把握、村人の移動の禁止、村への労働奉仕要請、年貢高の決定に関する規定の他、三成への直訴を認める内容も記されている。
 この掟書からは、農村をマネジメントする仕組み、租税体系の構築という領国経営のエッセンスとなる要素が盛り込まれたものであると理解できる。三成は統治に関して明確なルールを規定することで、公正な領国経営の体系を整え、三成をはじめ現場を監督するマネジャーである代官に至るまで掟書にあるルールを守ることによって領民との信頼関係を築いた。この信頼関係によって持続的な領国経営を可能にしたのである。その証拠に、三成が築いた領国経営のシステムは江戸時代の領国経営に引き継がれていくのだ。
 これは、SDGsの目標の11、16にあてはまる。
11. 「住み続けられるまちづくりを」…包括的で完全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する。
16.  「平和と公正をすべての人に」…持続可能な開発のための平和で包括的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。(参考 ヒストリア講座テキスト)
 このようなSDGs分析がなされ、天下人になれなかった理由を探る。わずか15分だが聞き応えがある。
 来年予定されている講座は「彦根の武将の章」として、2021年2月15日(月)「山崎氏・高野瀬氏・高宮氏」、3月17日(水)「百々氏・田付氏・本庄氏」。超マニアックな武将を取り上げているところも気に入っているが、どのような領国経営を試みたのか…。SDGs分析に興味津々なのである。
 コロナ禍で受講定員が大幅に制限されるので、早めの申し込みをしておきたい。

彦根ヒストリア講座 神になれなかった近江の強者たち
彦根の武将の章

2021年2月15日(月)山崎氏・高野瀬氏・高宮氏
2021年3月17日(水)百々氏・田付氏・本庄氏

講師 谷口 徹 氏
会場 彦根ビューホテル
時間 18:30開場・19:00スタート
受講料(各講座) 一般700円 / 学生無料

お申し込み・お問い合わせ

彦根商工会議所
TEL: 0749-22-4551
https://www.hikone-cci.or.jp
https://www.hikone-cci.or.jp

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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