今年一番の絶景 小谷山 岩場からの眺望
一日回峰行(長浜市)で
地元にゆかりのある五人の賢人を顕彰する施設・五先賢の館(長浜市北野町)が募集した「一日回峰行」に参加させていただいた。五先賢の一人、比叡山延暦寺の千日回峰行の創始者・相応和尚にちなんで名付けられ、地域の史跡や小谷山を巡る約8kmの行程で回峰行というよりも爽快な山歩きだった。主催する田根連合自治会のボランティアメンバーも含め、老若男女85人が参加した。
例年にも増して今年の紅葉は美しかったように思うが、モミジはもちろん、緑から黄色、茶色とグラデーションで色づく名も知らぬ広葉樹も目を楽しませ、小谷城跡の遺構や設置されているたくさんの解説看板も読みながらどんどん歩くことができた。暑いくらいの陽気かと思えば、尾根筋に出ると冷たい風が吹きつけたが、空はずっと青空だった。一番の収穫は、〝絶景の岩場〟からの眺望。間違いなしの絶景だった。この景色を見ることができて、来たかいがあったと心底思った。
一日回峰行の参加証は名刺を一回り大きくしたサイズのルートマップだった。マップによると見えているため池は〝西池〟で、全国ため池百選とある。温泉施設の屋根が見える須賀谷町は国道365号線から随分と奥まっていて、長く伸びた尾根筋に挟まれるようにあり、山々の稜線がきれいに見えるのは好天気のせいだろう。遠くに見える琵琶湖は銀色に輝いている。以前、小谷山に登ったのは、小谷城戦国歴史資料館がある小谷郡上町側からだった。その時も眺望を楽しんだが、絶景の岩場は今回初めて知った。帰り道の須賀谷町を右手に見て下る尾根道にあり、難コースだがロープにも助けられて下りきることができた。
参加させていただいて良かったことの一つに、モヤッとしていた五人の賢人名がはっきりしたことがある。マップには、相応和尚の生地(北野町)、片桐且元の生地(須賀谷町)、海北友松の生地(瓜生町)、小野湖山の生地(高畑町)、小堀遠州は生地ではなく小室城址(小室町)とゆかりの五人の名前が記されている。ネットで検索してみるとそれぞれの賢人の賢人たる由縁もわかり、お手軽で申し訳ないが、修行の成果としておこう。狭いエリアにこれだけの賢人が揃っていることはきっと珍しいことに違いない。近江はやっぱりいいなぁと嬉しくなった。
一日回峰行では、通常、五先賢の館へ帰着後、参加者は抹茶でもてなされ、講義も行われる。コロナ禍での開催となった今回は、茶会と講義は取りやめになった。残念に思うが、こんな身近なところに、濃密な歴史に触れることができるエリアがあることに気づかされ、また日を改めて訪ねてみたいと思う。五先賢の館、いいなぁである。
【蜻蛉】