菅浦で春を夢見て、冬に桜を手入れする

奥びわ湖桜守講座 2019

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2020年1月8日更新

 11月最後の日、長浜市西浅井町菅浦で〝桜並木を守るためにいまできること〟を考え実践する講座が開かれた。
 菅浦は、奥琵琶湖パークウェイを含む湖岸約22キロにわたり、3000本以上の桜並木が続く、海津大崎とともに湖北では桜の名所として知られたところだ。受講生は県外からの参加も含めて18人、地元菅浦の方も参加された。
 講師を務めたのは公益財団法人「日本花の会」・さくらの名所づくりアドバイザーの松井章泰さん。地元の愛知県新城市で2007年に始まった「100万本の桜プロジェクト」の代表で、桜の植樹や樹勢回復を実践してこられた方だ。活動のきっかけは、「きれいな花を見たいから、元気をなくした桜を元気にしたい」だったと話され、桜が好きだから続けてこられたとも。
 お花見が好き、桜が咲くのが待ち遠しいなど、桜は日本人にとって特別な花といえるだろう。でも好きなのは花だけ……? 花の季節だけを愛でるのは都合が良すぎるよね……。松井さんのお話を聞いて桜に対して申し訳ないような思いになった。

 よく、「桜伐るバカ、梅伐らぬバカ」といい、桜は剪定しないものだとどこかで決めつけていた。松井さんから、バカが桜を伐るのは良くないという意味で、適正な剪定は樹勢回復のために必要不可欠と聞いて、目からうろこが落ちた。二つめのうろこは「ソメイヨシノ60年寿命説がありますが、手入れをすれば100年でも大丈夫」だということ。昭和30年代から40年代にかけて植樹されたソメイヨシノはそろそろ寿命を迎えるころで、木に元気がないのはそのせいだと思い込んでいた。桜に申し訳ないとまた思う。
 講義の後は実践作業。全員で湖岸の桜を何本か見て回り、枯れ枝は取り除き、剪定が必要な「ふところ枝」や「からみ枝」、「胴ぶき枝」がどんな枝なのかを教わり、実際に剪定作業も行う。同じ方向に伸びる枝が何本かあると、「どの枝を伐りますか」と参加者の意見を聞くこともされ、松井さんは「桜をどう育てるかは住む人が決めればいい」とも言われた。
 菅浦の桜は昭和50年代に植えられ、まだまだ元気だと思うが、「てんぐす病」などの病気にかかったり、倒木するなどの問題も出始めている。作業中、実際にてんぐす病にかかった枝も見つかり、「30センチほど手前から枝を伐ってください」と松井さんが声をかける。てんぐす病は、カビの一種が原因で発生する伝染病で、病気にかかった枝は、花芽がつかず、葉芽だけが箒状に伸びるのが特徴。枝が枯れるだけでなく、空気感染によって広がる心配もあり、伐った枝は焼却処分するのが最適だとも教わった。最後は一本の木の廻りに深さ30センチほどの穴をいくつか掘って、固形肥料を埋める施肥をして、講座は終了となった。

 松井さんは2008年から2016年まで毎年11月に地元で剪定や施肥作業をイベント化した「秋のさくら祭り」を開催してこられた。素晴らしいことだと思う。菅浦の人たちは、親世代が植えた木だからとか、植樹直後の数年間は下草刈りをしたなど愛着も持っておられる。背が高い桜の剪定は、一人では手に負えそうもないし、高所の作業は安全面での考慮も必要だ。菅浦でも「さくら祭り」のような保全活動が行われるなら、私もお手伝いしたいと思うし、家の近所の桜並木も手入れしてあげられたらと思う。
 桜をずっと好きでいること、それが大切なのだ。

蜻蛉

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