紅葉の名所・鶏足寺で

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2019年11月27日更新

 県内屈指の紅葉スポット・鶏足寺(長浜市木之本町古橋)。およそ200本のモミジと、落ち葉が赤いじゅうたんを敷き詰めたように境内を彩る美しさで知られるが、広い境内は紅葉の季節に限らず、いつ訪れても美しい。地元の人たちで作る「古橋史跡文化保存会」のメンバーが毎月1回、整備活動を行っているからだ。除草作業から落ち葉拾い、木の剪定、遊歩道の整備、溝の修復、案内看板の設置など、できることは何でも行っている。10月下旬、「昨年の台風で倒れた木をベンチにする」と聞き、作業を見に行った。
 境内の最も奥にある本堂近くに2本、本堂の石段下の坊跡にも2本、杉の倒木が並べられ、集まったメンバーは6人。山仕事に詳しい山内新一さん(73)を中心に作業が始まった。山内さんが準備したのは、釘を巨大にしたような「金矢(カナヤ)」、木製で手作りの「矢」、「万力」、「とび口」、ハンマー、ロープなど。山内さんは「木元、竹うらと言うてな、木は根元から割り始めるんや」と、根元の木口の亀裂を見つけて、まず金矢を中心付近に打ち込む。その隣にもう1本、さらにもう1本と6本ほどを打ち込んだ。亀裂が広がり、木が裂ける「ミシミシ」という音が聞こえ始めた。

 広がった亀裂に矢も打ち込まれると、幹にも亀裂が入る。すると今度は幹に金矢、矢を打ち込んでいく。根元の亀裂が広がると矢を抜き、先へ先へと先端まで打ち込んでは抜くを繰り返していく。山内さんは「矢を打つのも、木の目を見て通っていそうなところでないとうまくいかんの。場数を踏めば誰でもわかるようになるけどな」と言われる。直径約40センチ、長さ約4メートルほどの杉の丸太はこのようにしてミシミシと真っ二つに割れた。要した時間は20分ほどか。
 「どこに置く? ここに並べるか」などと話し合いながら、次に使ったのはそれぞれにロープをつないだ2つの万力。万力を2つ、並べるように木口にハンマーで打ち付け、杉の木の下に細めの丸太2本を敷いて、ロープを引きながら丸太の上を転がして動かすのだ。ロープを引く人、丸太を動かす人、テキパキと杉の木が運ばれる。珍しそうに見ていた観光客も「引かせてください、手伝いましょう」とロープを引く一幕もあり、和気あいあいのムードが漂う。「この辺でよいやろ」と場所が定まると、山内さんが万力をハンマーで2回ほどたたくとスッと木から抜けた。そして2つに割れたもう一方にも万力を打ち込み、同様に動かして定位置に運ぶ。
 この間、活躍していたのは「とび口」と呼ぶ道具。鳥のくちばしのような形の金属が、約1.3メートルほどの柄の先についている。木の下に咬ませ、テコの原理でわずかな高さを持ち上げたり、突き刺して木を動かしたり、「名人芸」と呼びたくなる。

 電気などの動力を使わず、それ自体は小さな道具を使って大木を割り、動かす、山内さんは「山仕事の知恵やな。機会があれば伝えておきたい」と話す。
 2つに割れた木は、合計8つ。チェーンソーや電動カンナで形を整えられ、訪れた人が休憩できるベンチになった。
 大変な作業もどこか楽しそうに見えるのは、自分たちの手で訪れる人をもてなしたい、喜んで欲しいという気持ちで作業されるからだ。
 鶏足寺の紅葉は今月いっぱい、天候次第で来月初めまで楽しめそうとのことだ。

蜻蛉

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