令和の時代の「一圓屋敷」

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 2019年5月30日更新

 「多賀さとの宿一圓屋敷」が6月1日にオープンする。一圓屋敷は、平成の最後の10年間、「多賀里の駅」として、多賀町のまちおこしの拠点だった。地元の女性が自分で作った野菜を自分たちの料理でもてなす「農家レストラン」があり、地元で活躍する人たちが自分の仕事の魅力を紹介する「集い」をし、それから何と言っても「野鳥の森の植物観察会」は、何回行っても新しい発見があって楽しかった。

 一定の成果をおさめて、活動はいったん休止となった。屋敷があちこち傷み、大規模修理が必要になったからだ。屋敷を含む、庭や民具や屏風や書などの文化財は、どうしていったら守れるか、どうしたら未来へ残していけるか、2年に亘る議論が繰り返された。まずは資金を得る策が練られ、このたび、国の補助金などを得て、1年かけて改修工事が行われた。そして、令和を迎えたこの6月、リニューアルオープンする。不安定だった床や、落ちていた瓦は改修された。けれどもまだまだ資金は足りない。これからも策は練っていかねばならない。

 さて、今回の改修工事で大きく変わったところは、宿泊施設になったところだ。これまでの活動に携わってきた有志で設立した合同会社(Limited Liability Company)が「多賀さとの宿一圓屋敷」を運営する。写真のように庄屋屋敷らしい大きな梁をながめながら、ふかふかのベッドで休むことができる。お風呂あがりに休憩するラウンジからは、杉坂峠の三本杉が見える。江戸時代の後期に建てられた国の登録有形文化財である一圓屋敷の築150年を十分古いと思っていた私たちは、目の前に現れた三本杉に、はるかな神話の時代を感じることとなった。三本杉は、国生みの仕事を終えられた伊邪那岐大神が高天原からこの峠に降りて休憩をされた場所だ。

 「多賀さとの宿一圓屋敷」の新しいロゴマークは多賀大社前にそびえる古代の巨岩信仰に起源をなす青龍山をイメージしたもの。一圓家10代一圓杢太夫が屋敷を「対山軒」を名付けたことに由来する。神話の時代から令和の時代へ、一圓屋敷はこれからも私たちが責任をもって未来へ伝えていきたい。

LLCさとやま多賀

多賀さとの宿 一圓屋敷

〒522-0317 滋賀県犬上郡多賀町一円149
tel / fax 0749-20-8275
宿泊の予約は https://www.ichienyashiki.jp より

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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