カロム ミニ・スリム登場

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2019年1月31日更新

一番上がカロム ミニ・スリム。

 カロムは滋賀県の北東部で明治時代中頃から遊び継がれてきた伝統遊具だ。四隅にポケット(穴)がある正方形の盤上で、扁平な円筒形の玉を指で弾きながら行うビリヤードに似たボードゲームである。キャロム、カランボ、カロン、康楽球(カーロンチュー)など呼び方やルール、盤のデザインは少しずつ異なるが、地球上の各地に存在している。
 日本のカロムについては、3種類の系統があることがわかっている。
 ひとつは、日本の登山家が日本に持ち帰り遊んだチベットやネパールなどインド亜大陸のカロムである。ポケットは円形で、彦根のカロムに馴染んでいる者にとっては、随分と小さく感じるに違いない。現在、世界選手権大会の公式盤の基本デザイン(約74センチ四方・四隅のポケット直径約4・45センチの円形)は、これらインド亜大陸のカロム盤のデザインが基本になっている。
 次に、盤面にチェックの模様が描かれているカロムである。このカロムは商社やメーカーが海外から輸入し、日本に紹介したものだ。「美津濃」(現 美津濃株式会社)発行の大正6年(1917)のパンフレットに「ポケット玉ハヂキ(|名カルム)」として掲載されている。
 実は、かつて日本全国に普及し遊ばれたカロムはこの「ポケット玉ハヂキ」なのである。昭和30年代には東京のデパートで購入することができ、南極観測のレクレーションにも採用されたカロムゲームだ。「ポケット玉ハヂキ」の名は時と共に世界から消え生き残れなかったが、今でも同じような盤がアメリカ、日本で販売されている。
 そして、滋賀県の北東部で100年以上遊び継がれた「彦根カロム」である。
 何故、彦根にカロムが遊び継がれたのかという疑問がある。これには明確な解答はない。ただ言えるのは、彦根でカロムの製造販売を始めた中野木工所が大正時代からカロムを造り、販売し続けていたことは彦根に残った大きな要因である。現在カロムの製造販売をしているのは株式会社奥居仏具が運営する「OLD & NEW」だけになった。
 「OLD & NEW」の製作するカロムのラインナップは、カロム日本選手権大会の公式盤、公式盤スリム、カロム大の3種だったが、2018年末「カロム ミニ・スリム」という新しい規格(45センチ四方)の盤を売り出した。
 奥居仏具社長の奥居雅彦さん(65歳)はカロム ミニ・スリムの製造に至った経緯を「本業のかたわらカロム盤の製造を始めて30年以上になります。公式盤より小さな盤はないですかという問合せがあり、ひと回り小さく薄いカロム盤を造ることにしました。弾く力が弱い幼稚園児や小学校低学年の子どもにとっては、公式盤ではなかなかポケットに入れるのは難しく、カロムの面白さを知るまでに嫌いになってしまうかもしれません。小さな頃からカロムに親しんでもらえたらと思いました。展示もしていますのでご来店いただけると、大きさの違いを実感していただけます」と話す。放課後児童クラブや、お孫さんのためにという問合せが多いそうだ。
 盤の厚さは、通常9センチなのに対して、公式盤スリムは厚さ6センチ、ミニ・スリムは3・5センチとなっている。テーブルの上に置いてもあまり違和感がない。
 カロムはいろいろ小さな進化を繰り返しているようだ。実際ミニ・スリムで遊んでみたが、カロムに親しんだ大人には物足りないが、カロム初心者や子どもには確かにうってつけだ。弾く指の力をあまり必要としないので、思い描いた通りにポケットに入れる喜びを味わうことができる。考えようによっては大人がミニ・スリムでゲームをすれば、公式盤とは違うエキサイティングな展開も期待できるのではないだろうか。

文責 杉原正樹

OLD & NEW

滋賀県彦根市川瀬馬場町1071
TEL: 0749-23-4834
営業時間 10:00〜17:00 / 定休日 土・日曜

カロム ミニ・スリム 10,000円・公式盤15,000円・公式盤スリム12,000円・カロム大20,000円、カロムパック(玉)セット 2,500円(価格はいずれも税別)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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