半月舎だより 25

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年11月26日更新

3つの本屋の「おなみだぽいぽい」

 2016年から、滋賀県立大学教授の細馬宏通さんをお迎えし、「かえるの学校」というシリーズ名で、音楽やマンガなどの講座をさせてもらってきた。年ごとにテーマを決め、半月舎で隔月開講してきたが、今年は絵本をテーマに、近所のカフェ・朴さんで4回開いた。
 絵本というと、「名作」といわれるような、長く支持されてきた作品を思い出すことが多いと思う。かえるの学校でも、1977年の発売から発行部数百万部を超える人気作品「もこもこもこ」(谷川俊太郎・元永定正)を皮切りに、「だるまちゃん」シリーズや科学絵本を多数残した絵本作家かこさとしの作品、世界中にファンをもつマーガレット・レイとハンス・レイ夫妻の代表作「おさるのジョージ」と「星のみかた」というように、4回のうち3回は、だれもが知るような作品をあつかった。子どもの頃読んだ思い出深い作品を、親となって子どもに読み聞かせることが絵本のロングセラーをつくるということは、講義中でも細馬さんが指摘されていた。
 そんななか、7月に取り上げたのは、「おなみだぽいぽい」という、昨年発行された新しい絵本だった。イラストレーターとして活躍する後藤美月さんによるはじめての絵本で、半月舎も取引のある出版社・ミシマ社から発行された。近隣エリアを担当しているミシマ社の営業Tさんが、いつになく力を込めて「いい本ができました」と紹介してくださり、入荷したことを覚えている。
 主人公は、小さなねずみの女の子。
「じゅぎょうのとき せんせいのいうことわからなくて なみだこぼれそうなときあります。
…わたしのなみだがしみこんだ、ぱんのみみ。それを投げると、トリがキャッチして食べてくれて…。」(ミシマ社ホームページより) かえるの学校では、細馬さんと1時間半、じっくり時間をかけて1ページずつ、コラージュのように張り込まれたすこし不思議な絵、子どもの頃の涙を思い出さずにいられない物語、びっくりするようなところもあるけれど絵本の文法を踏まえた構成など、「おなみだぽいぽい」の魅力を楽しんだ。
 この講座の際、先のTさんがお越し下さり、「原画展をしてみませんか」と誘ってくださった。3年間、細馬さんと開かせてもらってきた「かえるの学校」の集大成になるような気がして、ぜひお願いしますとこたえた。それが来月実現する。それも、彦根城下町エリアにある&Anneさん、MITTS FINE BOOK STOREさんという3つの本屋をめぐる原画展となることになった。ふだんあまりトークイベントなどされないという著者の後藤さんにも、1日には細馬さんと対談いただくことになった。
 後藤さんはそれぞれの本屋をイメージした新しい絵を描き下ろしてくれ、フライヤーには半月をイメージしたものをあしらってくれた。ことばにならない気持ちのような、まだゆくえのわからないこの新しい「名作」の世界を、みんなで楽しめたらと思っている。

おなみだぽいぽい 後藤美月 絵本原画展〜ねずみなげたみずのおと篇〜

日時 2018年12月1日(土)〜11日(火)※会期中 水木休み
会場 半月舎・&Anne・MITTS FINE BOOK STORE

トークイベント「かえるのめ、ねずみのくち、ぱんのみみ、」

細馬宏通(滋賀県立大学教授)×ごとうみづき
日時 2018年12月1日(土)15:00〜16:30(14:30受付開始)
会場 &Anne(彦根市中央町4-35)
料金 1,500円(おやつ付) ※要予約

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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