半月舎だより 24

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年10月31日更新

かたよった彦根案内

 7年前、半月舎の開店に先んじてはじめた一箱古本市「ひこねウモレボン市」。今年で8回目を迎えた今回はお天気もよく、たくさんの方がお越しくださった。なにをもって催しを「成功」というのかいまだにわからないが、今回50を超えた出店者さんの多くが、「また来年」と言ってくださったことに、ひとまずほっとしている。
 昨年は、縁あって信楽での古本市も主催した。小さな古本市だったが、よそでの催しということもあり、思えば気を張っていた。当日の朝、出店者さんが続々搬入に訪れ、案内に奔走しているなか、ひとりの出店者さんの車が溝に落ちた。なかなか抜けられず往生していたが、手を貸してくださったひともあり、試行錯誤の末、車はぽーんと溝から上がった。その瞬間、張っていた気もすっかりほぐれ、「いい古本市になりそう」と思ったのを覚えている。開店準備で忙しい時間帯だったにもかかわらず手伝ってくれたのは、Yさんという出店者さんだった。
 このYさんは昨年のウモレボン市にも参加し、後日店にも来てくれた。そして、「半月舎で展示会をしてみませんか?」と紹介してくださったのが、画家でイラストレーターのマメイケダさんだった。ふたりは同郷なのだそうだ。
 マメさんのことは、お付き合いのある京都の書店「誠光社」から「味がある。」という本が出ており、店でも扱っていたので知っていた。クレパスの匂いが立ちそうな迫力のタッチの食べものの絵で満たされた傑作イラスト集だ。コンビニで売っているようなパンも、ちょっと特別な食べものも、どれも等しく堂々とうまそうに描かれ、いっぺんで好きになった。
 春、名古屋に用事のあったマメさんが彦根で途中下車してくれ、会うことになった。Yさんと3人でお昼時の定食屋に入ったが、わたしは空腹を感じておらず、注文を決めかねた。ためらいながら「ビール…」と口にした途端、マメさんがすかさず「ビールですか?飲みましょう」と言い、初対面での食事にもかかわらず、わたし達は瓶ビールを注文した。急に日差しの強くなった春の真昼に飲むビールは、格別においしかった。後日マメさんは、「お酒を飲むひととわかりうれしい」とメールをくれた。
 そんな調子で個展開催の話はゆるやかにすすんだ。最初は過去に描きためた作品を半月舎と隣のグッドラックストアで展示してもらい、できれば彦根の食べものの絵も数点描いてもらえたら…というくらいのつもりだったが、二度目にマメさんが来彦された際「個展の名まえは『彦根』でどうか」と言ってくれ、すべて彦根の食べもので描きおろす展覧会となることになった。その後一回また一回と彦根に来てもらい、一緒に食べ飲み歩いた店は20店舗近くなった。搬入の晩に食べたものまで、マメさんは夜を徹して描いていた。
 スイス、フレーバー、まるいし、三中井、カンタータ、さざなみ酒店、名城園、まさ味、朴…18の食べものの絵と、14のお店のスケッチが、中央商店街のはじっこの2店に並べられた。知っている店のせいか、じっと見ていると音や匂いまでしてきそうな絵の数々だ。「美食」「名店」とも違う文脈のこの店たちのあつまりを、マメさんは「かたよった彦根案内」と名付けてくれた。近所の方や、ふだんは店までいらっしゃらないような方も興味をもってくれ、展示会は連日賑わっている。あの店この店の話に花が咲き、そのうちなんだかお腹がすいてくる。そうして空腹を満たしにまちへ繰り出す。それだけで、このまちに暮らしていることがなんだかうれしくなる。

M

マメイケダ展「彦根の飲食店」

日時 2018年11月4日(日)まで ※会期中11:00〜19:00、水木休み
会場 半月舎、The Good Luck Store(半月舎隣)
入場無料 作家在廊日 10/28(日),11/4(日)

トークイベント「マメイケダのめぐった彦根の飲食店」

ゲスト 細馬宏通(滋賀県立大学教授) 福永信(小説家)
日時 2018年11月4日(日)17:00〜おなかがすくまで
会場 The Good Luck Store
料金 1,000円(本展オリジナルマッチつき) 要予約

TEL: 0749-26-1201(半月舎)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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