Extravaganzi!!

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年9月28日更新

 平出智子(ひらでともこ)さんからスミス記念堂でコンサートをしたいとご連絡をいただいて1年近くになる。
 平出さんは、滋賀県東近江市の出身である。近江兄弟社(現・ヴォーリズ学園)中学・高校を経て、エリザベト音楽大学パイプオルガンコースを卒業。しばらく音楽活動から遠ざかっていたが、2008年渡仏。古楽部門に定評のあるパリ郊外オルセー市コンセルヴァトワール古楽科にてクラヴサン(チェンバロ)を始め、以降古楽の世界に魅せられた。毎年日本での演奏会をはじめ、ヴェルサイユ・バロック・センター(CMBV)主催のヴェルサイユ宮殿コンサートに度々出演、エソンヌ県バロックオーケストラ参加など、フランスと日本でソリスト・通奏低音奏者として活動している。スミス記念堂でのコンサート「Extravaganzi!!(エクストラヴァガンツィ)」も、その活動のひとつである。
 今回のプログラムに関して平出さんはこんなふうに話している。
 「天正少年遣欧使節に興味があり、色々調べているうちに彼らと音楽の関わりが非常に多かったことを知りました。私が専門にしている音楽は16世紀末から18世紀初頭のものですが、まさにその時期に、天正・慶長の2度の遣欧使節が欧州を訪れ、その当時の音楽に触れていたのです。日本では宣教師達によってもたらされた当時の楽器や音楽を、信長や秀吉はもちろんですが、私たちの祖先も聴いていたのです。何年かの時間差はあれ、ヨーロッパと日本で同じ音楽を聴いていたという事実は、私に何ともいえない感慨をもたらしました。天正・慶長の2度の遣欧使節がヨーロッパを訪れた時期は、音楽史上ではルネサンスからバロックへの過渡期にあたり、特に当時の文化的最先端の地であったイタリアでは、才能豊かな音楽家達が競うように新しく、時に実験的な作品を創り出していました。この驚き(=Extravaganzi)がたくさん詰まった作品群を聴いていただきたくて、スミス記念堂でのコンサートを企画しました」。

 スミス記念堂は、昭和6年にアメリカ人牧師で、彦根高等商業学校(現・滋賀大学経済学部)の英語教師だったパーシー・アルメリン・スミスが彦根城の旧・中濠端(現・外濠)に建てた和風礼拝堂だ。葡萄の蔓が巻き付いた十字架や聖杯、松竹梅の文様が彫られており、釘隠し・欄干・瓦など、純日本風建築の中に西洋の意匠が違和感なく溶け込んでいる。
 「共演は、サラ・デュビュスとギヨム・ボリュー。フランスの若手でトップクラスのリコーダー&コルネット奏者です。この2人と、当時の日本でもそうであったように、木造建築の会場で演奏させていただきます。時代の移り変わりを内包した音楽のエネルギーや遥かに海を渡った同胞を思い浮かべながら、楽しんでいただけると嬉しいです。クラヴサンの魅力は、古楽器の魅力ということにもなりますが、非常に繊細であること、弾き手の思いやその場の雰囲気などが直接演奏に現れること、あと自由であること、でしょうか……。私はコンサートにおいて、空気に音が伝わる感触や場の雰囲気も音楽と同じく重要なものと思っています。古楽器は元々大きな会場での演奏には向いていないこともあり、来場の方々と近い位置で演奏するのが好きです。 私の一番古い本物のコンサートの記憶は5〜6歳の頃、父に連れて行ってもらったものです。オレンジ色の舞台に暗い客席、流れるヴァイオリン……、その時の「わぁ」という思いを、演奏を聴いてくださる方と一緒に自分も何度でも味わいたくて……」。
 「Extravaganzi!!」は10月27日(土)。携帯電話から音楽も映画も写真も思い出も、何でも取り出せる日常だが、リアルな「わぁ」を味わう機会は人生において滅多にあることではない。ひょっとしたらこの日を逃したら……もうないかもと思うと、気になって仕方ない。リアルな体験こそ宝物なのだ。

古楽器コンサート Extravaganzi!!

遣欧使節も聴いた、イタリアの音楽

・サラ・デュビュス(リコーダー&コルネット)
・ギヨム・ボリュー(リコーダー)
・平出智子(クラヴサン)

2018年10月27日(土)スミス記念堂(彦根市本町3丁目)
開場15:00・開演15:30〜

2018年11月4日(日)伝統芸能会館(大津市園城寺町)
開場15:00・開演15:30〜

大人3,000円・中学生1,000円
ご予約・お問合せ(会場・お名前・人数をお知らせください)
.(JavaScript must be enabled to view this email address) / TEL: 050-8035-7966

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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