今年の花見は観梅

彦根城大手門梅林ライトアップ

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2017年3月7日更新

 もうすぐ春である。僕の春は毎年キャンディーズの「微笑がえし」で始まる。♪春一番が、掃除したてのサッシの窓に♪と、心の中で唱えながら……(僕は決して声に出して唄わない)……運び出された荷物のあとは畳の色がそこだけ若いわ♪。そういうときの僕は機嫌が良い。そして、僕は華やかな花見はあまり好きではない。どうも億劫なのだ。
 昨年も同じようなことを書いた記憶があるが、日本の花見文化は、奈良時代に始まる。中国から伝来したばかりの梅を鑑賞していたのだ(日本古来の原産地説もある)。「観梅」という熟語が物語るように、桃や桜に先駆けて咲く花を愛で、馥郁たる香りを愉しみ、身に纏う。「松竹桜」ではなく「松竹梅」と記すことからも、「桜」よりも「梅」はプレミアムな存在だったに違いない。
 現代、花見といえば「桜」だ。
「ソメイヨシノは江戸時代にオオシマザクラとエドヒガンを交雑して作り出された品種である。成長が速い反面、種子を残すことはほとんどなく、最初の1本から接木されたものが日本中に拡がった。現在の桜の名所は、紀元二千六百年記念や戦後復興の町づくりとして植えられたものがほとんどだ」という話はインターネットの発達でよく知られている。
 話は違うが、僕が勝手に師匠として尊敬する方が、一方的にCDを事務所に置いていかれた。それは小林秀雄の講演録だった。
「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」、本居宣長の山桜の話であった。
 見る人もなく朝日に匂う山の桜を美しいと思った。匂うのである。梅も観梅とはいうが、匂う。澄んだ動かない空気をこの身に纏うのは難しい。
 彦根城大手門梅林で、3月10日・11日、17日〜19日、24日〜26日にライトアップイベントが行われる。彦根城内にある、約400本の紅梅や白梅が咲き誇る梅林は、江戸時代には米蔵があった場所である。1950年、彦根城が新日本観光地百選に選ばれたのを記念して、この梅は植えられたらしい。
 ライトアップは日没から20時までというから、随分夜は冷えるだろうと思うが、♪春一番が〜♪と初体験故、僕はご機嫌なのだ。梅が香る冷たい空気を持ち帰ることができるだろうか。
早起きは苦手なのである。

風伯

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