" />

YOKAI NO SHIMA

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2016年9月12日更新

『YOKAI NO SHIMA 日本の祝祭─万物に宿る神々の仮装』〈青幻舎〉
判型:B5変 / 総頁:256頁 / 上製 / 定価:本体3,800円+税 / ISBN978-4-86152-529-2 C0072

 『YOKAI NO SHIMA 日本の祝祭─万物に宿る神々の仮装』(青幻舎)という書籍があることを知った。ネットネイティブの世代ではないが、インターネットは便利だと思うくらいには使うことができる。部屋に居ながらにして大抵のことが解ってしまうのだから人と話すことが新鮮に思えても仕方がない。しかし、言葉の語尾でこちらの気持ちをはかろうとするイントネーションがいつ頃から流行りだしたのか…、どうもイラッとしてしまうのである。そんなだからこの本に出会えたのかもしれない。
 紙面で書籍の紹介をすることは滅多に無いが、淡海妖怪学波としてはどうしても目を通しておきたい。著者のシャルル・フレジェは、世界各地の民族衣装や祭礼のコスチュームを撮り続けるフランス人写真家である。日本各地を巡り、それぞれの土地の祭りの仮面や装束など、様々な妖怪のポートレイトが収められ、巻末に「21世紀の民俗学」の畑中章宏がそれぞれの妖怪の特徴を解説している。フレジェがどんなものを「YOKAI」と感じているのか興味深い。
 7月16日、島根県松江市の「小泉八雲記念館」がリニューアルオープンした。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、伝承的な昔話や伝説に文学的魂を吹き込み語りなおした「再話文学」で、異界の交渉を描いた。怪談である。「耳なし芳一のはなし」「むじな」「ろくろ首」「雪女」などは、中学時代に英語で読んだ人も多いだろう。耳なし芳一は、教科書に載っていたような気がする。
 ラフカディオ・ハーンは文明開化の日本において、シャルル・フレジェはインバウンド誘致が盛んに行われている現代において、外国人の目線を通して日本の精神性、異界を想像する能力と継承により生まれいづる美意識など、その素晴らしさを気づかせてくれる。
 昨今の妖怪ブームで淡海の妖怪コレクションも停滞ぎみだが、少しずつだが進んでいる。何が大切なのか…、忘れずにいたいと思っている。
 始まりは、「妖怪をコレクションすることは、妖怪を信じた人々の心にあった恐怖や不安、或いは、社会が抱えていた問題や恐怖、それらとの葛藤や戦いを知るための一つの手段であり得るのではないだろうか」などと語っていたが、今や、新しい恐怖、それらとの葛藤や戦いがあるに違いない。

小太郎

スポンサーリンク
関連キーワード