NHK大河ドラマ『真田丸』に期待

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2016年2月2日更新

真田幸村(信繁)娘の墓(彦根市笹尾町 少林禅寺)

 2016年1月10日からNHK大河ドラマの第55作となる『真田丸』の放送が始まった。真田丸は、慶長19年(1614)大坂の陣において、真田信繁(幸村)が大坂城平野口の南に構築した戦国時代最後にして最強の砦の名だ。ストーリーは真田丸を作りあげるまでの信繁の生涯を描いたものだという。ラスト近くでは、初陣の井伊直孝の赤備え軍団と真田の赤備え軍団の対決が描かれるかもしれないと密かに期待している。
 2010年7月、真田幸村の娘が彦根藩士に嫁いでいたという話を書いたことがあった。今旬の話題『真田丸』である。新しい情報も加えて改めて以下に記しておく。
 幸村の本名は「真田源次郎信繁」。大坂の陣で宿敵徳川家康と戦った彼の武勇は、後世に語り継がれることになった。この時信繁49歳。家康を追い詰めた真田信繁の名は江戸時代、禁句とされ、幕府を憚った講釈師によって「幸村」として語られるようになったという(本稿は以下、信繁ではなく幸村と記す)。そしてその名は、真田十勇士と共に小説やアニメ、ゲームなどで知られ、最も人気のある武将でもある。
 幸村は、真田昌幸の次男として生まれた。父、昌幸は、少年の頃から武田信玄に仕え、青年期には信濃武田軍歩兵部隊の一隊をまかされ独自の「真田戦法」をつくりあげた。徳川の大軍と二度戦い、二度とも破った類のない戦歴をもっている。幸村の武勇は昌幸の影に隠れていたが、大坂の陣で鮮烈なデビューを果たすことになる。
 『彦根史話』(1964年・宮田常蔵著)に、次のような記述がある。「大坂方の名将真田左衛門佐幸村には一子大助の外に一女があった。彦根藩士青木五郎兵衛の妻となって、大坂両陣の頃には彦根に在住していたが、父は大坂方の将として弟大助と共に大坂城に入り、夫は井伊家の家臣として、直孝に従って東軍の陣中にあった。(中略)青木氏はもと信州上田城主真田昌幸の家臣であったが、武田氏滅亡後、武田方の四手の将山県、土屋、馬場の諸将の手のものと一緒に七十余名が徳川氏に降り(中略)、井伊直政に前記四手の士七十余騎が配属されたが、青木氏の初代もその中の一人であった」。
 余談だが彦根城築城後、屋敷を与え住まわせ七十人衆とよんだのが、七十人町(現:京町三丁目の一部)の名の起源だという。
 さて、真田幸村の血脈が仙台真田氏として受け継がれていることを記した『仙台真田代々記』(1996年・宝文堂)、『真田幸村子孫の仙台戊辰史―真田喜平太の生涯―』(2013年・株式会社宮帯出版社)の著者小西幸雄氏は仙台真田氏研究の第一人者である。小西氏は『真田幸村と伊達家』(2015年・国宝大崎八幡宮仙台江戸学叢書)で最新の研究成果を記している。
「片桐重綱に保護された幸村の女子4人について、『仙台真田系譜』の記事に基づき前述した。この幸村の女子四人について、筆者が1996年に出版した『仙台真田代々記』では阿梅、おかね、阿菖蒲、名前不詳の八女として記述していた。その後の調査により、訂正しなければならない事実が判明したので、次に記載することとする。はじめに「青木次郎右エ門室」であるが、徳川家重臣の井伊直政に配属された、蒲生氏郷一族である青木五郎兵衛重賢の彦根二代目の青木五郎兵衛朝之(知行千石)の正室弁であり、元和6年(1620)4月18日に彦根で死去(法名・九品院殿智海妙恵大姉)し、その墓碑が彦根市笹尾町の少林禅寺に現存することが判明した」。
 青木氏の菩提寺は彦根本町江国寺である。少林禅寺は江国寺末寺だ。過去帳には四代目、青木五郎兵衛が彦根元祖と記録され法名は「徳挙院殿正因寿心大居士」。
 少林禅寺を訪れると、山腹に歴代住職の墓が並んでいる。その一番奥、斜面に向かい「九品院殿智海妙恵大姉」の墓碑がある。名将真田幸村の血脈の一筋がここに眠っている。彦根に嫁ぎ、大坂城落城の六年後に亡くなった女性が彦根で生きた証だ。父である真田幸村と夫の五郎兵衛が真田丸で戦っている……。そんなところがNHK大河ドラマ『真田丸』で描かれることもないだろうが、『真田丸』を観ながら幸村の娘のことを、少なくとも僕らは懐うだろう。
 ところで、石田三成が真田伊豆守に宛てた書状が、彦根市立図書館に残っている。真田伊豆守は幸村の兄信之である。三成と信之は仲がよかったらしく、『真田丸』での石田三成の描かれ方に期待が寄せられる理由の一つになっている。

参考

  • 『彦根史話・上』宮田常蔵著・発行所 彦根史話刊行会
  • 『井伊の赤備え―彦根藩の甲冑―』彦根城博物館
  • 『歴史読本 戦国武将の美学』新人物往来社
  • 『仙台真田代々記』宝文堂
  • 『真田幸村子孫の仙台戊辰史―真田喜平太の生涯―』(2013年・株式会社宮帯出版社)
  • 『真田幸村と伊達家』(2015年・国宝大崎八幡宮仙台江戸学叢書)

小太郎

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