ピアノ生誕300年・ハイドン没後200年 クラシックをもっと楽しもう!

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 2009年5月10日更新

左から、ベーゼンドルファーのピアノ、スタインウェイのピアノ、チェンバロ

 クラシック音楽を近くに感じた夜があった。
 先月、ひこね市文化プラザで開かれた『ひこね音楽夜話クラシック事始』と題した「初心者こそ楽しめる、クラシックのレクチャーコンサート」のときのことだ。国内外で活躍するピアニストの福田直樹さんをナビゲーターに、2回シリーズでクラシックの楽しさに触れる企画である。
 第一話のテーマは「ピアノから見る音楽の歴史」。
 オーケストラの楽譜も、最初はピアノで全てのパートを作っていくのだという。ピアノが誕生したのは、今から300年前。福田さんによると、音域や和音の運び方は、現代でもモーツァルトやベートーヴェンの時代と大差はないそうだ。

ピアニストの福田直樹さん

 「ピアノの発明が音楽の幅を画期的に広げ、一つの到達点を作りました。一口にピアノと言っても、様々な形があって、鍵盤の数や音色も違います。時代ごとに少しずつ、楽器の進化に合わせていろんな曲が作られてきました。その中には、私たちが親しみ深く感じているメロディーもたくさんあります。どこかで耳にしたことがあるメロディーが、いつ、どのように作られたのか、今夜はそれをご案内します」。
 ピアノ以前、弦を弾いて鳴らす鍵盤楽器チェンバロが主流だったバッハの楽曲から、より大きな音が響くようにハンマーで弦を打つピアノアクションが発明されたモーツァルトの時代を経て、鍵盤の数が増え、広く民衆に受け入れられるようになっていったベートーヴェンの頃にかけて…福田さんのお話と一緒に、20曲近い演奏を楽しんだ。
 バッハの曲はチェンバロで演奏するためにあり、ピアノでは物足りないこと、天才モーツァルトは最初、ピアノが下手だったこと、ベートーヴェンはドイツのピアノメーカー・ベーゼンドルファーで奏でた方が雰囲気がでることなど、クラシックを初めての視点で聴くことができた一夜だった。
 印象的だったのは、子ども達の反応だ。モーツァルトの「きらきら星変奏曲」のとき、客席でメロディーにあわせて踊っている子がいた。幼稚園かどこかで習ったのを思い出したのだろう。楽しそうだった。コンサート終了後、福田さんが持参されたチェンバロに触れることができると聞いて、まっ先にステージにあがったのも子ども達だった。
 「クラシックは敷居が高いと思われがちですが、そんなことはありません。まずはコンサートの中、一部分でも美しいメロディーにハッとすること、いろんな視点で聴いてみること、どこかで聴いた曲だなぁと気付くことが、より身近に楽しむ第一歩ですよ」。
 福田さんの言葉である。
 『クラシック事始』の第二話は6月に予定されている。
 弦楽四重奏の父と呼ばれるハイドン没後200年を記念し、同時代を生きたモーツァルト、そしてブラームスに焦点を当て、室内楽の魅力に迫る内容だそうだ。
 梅雨の季節。雨音から遠ざかったホールに、次回はピアノとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのアンサンブルが響く。ピアノの独奏とは、また一味違った時間になるはずだ。もちろん、福田さんのお話もある。
 少しずつクラシックとの距離が近くなる。そんな彦根の夜である。

F・B

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