紅葉橋を渡って「奥永源寺 渓流の里」へ行こう!
国道421号線。古く八風街道といった。滋賀と三重の間にある「八風峠」を越えることからこの名があると聞いたが「八風」の由来が判らない。「八」は「多くの」というニュアンスを持つ言葉だから、様々な風が吹く峠だったのだろう。
名神八日市インターから永源寺に向かうと、愛知川を渡る橋の名が紅葉橋。多分「こうようばし」ではなく「もみじばし」なのだと僕はずっと思っている。永源寺ダム、政所や君ヶ畑へ行く時には季節を遠望させてくれる名前でもある。
10月12日、僕は旧政所中学校の校舎を利用した「奥永源寺 渓流の里」という名の道の駅を訪れた。多くの人々で賑わっていたのは言うまでもないが、オープンを支えるボランティアの方々の笑顔が嬉しかった。
さて、道の駅はというと……、気になった「自分で焼く東近江バーガー」「永源寺ダムカレー」「岩魚天丼」などは、またゆっくり紹介する機会があると思うが、何より中学校の校舎である。当時の備品なども残っていて興味津々、販売に使っているスペース以外にも、教室が展示室に利用されていたりで実に面白かった。体育館、音楽室、階段を登り、廊下を歩く。子どもの頃には巨大な空間だった場所が、何もかも収縮した感じが不思議だった。こんなにも低く小さな机や椅子を使っていたのだ。座ってみるまでもなかったのだが、僕の成長は著しかった。
音楽室では、竹灯籠と、よしペンで描いた湖国の原風景の作品展が行われていた。思いと願いが込められた作品の背後の壁に「音楽年表」がそのままに貼ってあった。音楽室特有の床の段差もそのままである。その他、展示室の卒業アルバムや年表など、時間をかけ、ゆっくり、全部、見たい、眺めたい、ところである。縁の無い、山間部の中学校の記憶が、僕の記憶に溶けていく。僕はまたここを訪れるだろうなと思った。願わくば、その時も体育館や校舎を自由に歩くことができればいいなと思っている。
帰り際、地場産品を販売している場所に立ち入った。中学校の痕を見つけたかった。買い物は苦手だ。すれ違いざまに人と身体が触れそうになりながら、目に入った陳列棚に僕らには忘れることのできない名があった「山形蓮」。2014年4月から「地域おこし協力隊」として政所で暮らす彼女の名が記されたお茶が5種類、輝いていた。確りと茶作りをしながら暮らしているのだ。僕は4種類を買った。レジに持って行くと「れんちゃんの」という声がした。ここでも彼女は「れんちゃん」なのである……。
もうすぐ、美しい紅葉の季節である。大本山永源寺では、ライトアップ(11月7日~29日・17時~20時30分・入山には参拝志納料 500円が必要)が行われる。どうやら今年はいろいろと永源寺を訪れる機会が増えそうである。ハンバーカーを焼いて、4種の茶を買い帰ってくるのだろう。
名とは大切である。
振り返る記憶の手掛かりとなる。これから先、気持ちのよい遠望に登場する名でありたいと思う。
道の駅 奥永源寺 渓流の里
滋賀県東近江市蓼畑町510 / TEL: 0748-29-0428
営業時間 9:00〜17:00(4月~11月) / 9:00〜16:00(12月~3月)
休館日 毎週火曜日・12月29日~1月3日 / 駐車台数 45台
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【小太郎】