ふたつの目標

五個荘野球スポーツ少年団

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2014年12月29日更新

 2014年、僕は五個荘野球スポーツ少年団の写真を二度、撮ることになった。
 一度目は、浅井町野球場で行われた(10月4日・5日)「第33回読売旗争奪小学生軟式野球大会」で彼らが優勝した時。二度目は、東近江市長山運動公園グランドで行われた(12月14日)「第3回R421三重・滋賀親善交流大会」だった。この大会は、三重と滋賀の県境にある石榑峠トンネルの開通を機に、両県の国道421号沿いで活動する学童チームが交流し、互いのレベルアップや情報交換を行うことを目的とする大会だ。五個荘野球スポーツ少年団はこの時、12月7日に行われた第8回ポップアスリートカップ・ファイナルトーナメント決勝(横浜スタジアム)で、泉中山ドリームズ(宮城県)に9対1と快勝し、全国で2750チームの頂点にたっていた。ポップアスリートカップは6月1日に横浜スタジアムで開幕。その後各地でトーナメントが行われるシーズンを通しての大会だ。第2回大会を制した野洲キッドスポーツ少年団以来の滋賀県勢の優勝である。
 廣田勝美監督(46)にお話をうかがった。「今年は、二つのことを目標にしていました。多賀少年野球クラブに勝つこと、そして全国大会での優勝です。ポップアスリートカップは、今年の最後のチャンスだったので、目標を達成できて本当に喜んでいます。すぐにできそうな手の届くようなところにある目標ではなく、無理かもしれないけれど高い目標を持ちそれに向かって頑張る気持ちが大切だと、いつも思っています」。
 僕が、このチームに出会ったのは、多賀少年野球クラブに勝利した瞬間だった。以前、こんな記事を書いた『準決勝、多賀少年野球クラブとの試合。序盤から緊迫するシーソーゲームだった。勝ちが決まった瞬間、涙がこみ上げる。五個荘は先攻だった。3対2で負けていたが、五回表に逆転した。1点リードのまま六回裏。同点に追いつかれたが、多賀の逆転を許さず守り切った。誰かが「なに泣いてんにゃ。これからやぞ」と言ったが、涙は止まらなかった』。
 ようやくその叱咤激励の意味が解った。僕らは「まだ決勝戦が残っているのだから、なに泣いてんにゃ、これからやぞ」というくらいにしか思っていなかったが、「これからやぞ」という言葉は全国を示していたのだ。監督の言葉だったに違いない。
 キャプテンの堀尾晃希さん(12)に、もう来年は卒業だが、チームへ贈る言葉はないかと尋ねた。「いままで、ありがとうございました」。それが彼の言葉だった。ピッチャーの國領浩哉さん(12)にも同じ質問をした。答えは「いままで、ありがとうございました」だった。多分、五個荘野球スポーツ少年団26名は、全員同じように答えるのだろうと思った。気の利いた言葉より、心が動く。
 五個荘野球スポーツ少年団は、守備位置についた時、ベンチに戻ってきた時に、人差し指を立てかけ声と共に真っ直ぐにジャンプする。僕は、この日二つ目の目標である全国優勝を果たした彼らの勇姿を撮った。相変わらず、かけ声の意味は理解できなかったが、以前にも増して自信に溢れていたことは言うまでもない。

 

小太郎

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