路上観察、はじめます
街のなかにひっそりと存在している、佇まい好ましい「無用の長物」。それはあたかも現代アートのようだけれど、アーティストとしての作者がいるわけではなく、なかば偶然的に存在しているもの。それらを芸術を超えた芸術「超芸術トマソン」として見出し、とにかくよく観察し、名まえをつけ、愛でたひとたちがいた。前衛芸術家・赤瀬川原平氏や、現在は建築家として活躍する藤森照信氏などである。「トマソン」と名付けられたのが1982年、白夜書房から「超芸術トマソン」が刊行されたのが1985年なので、ずいぶん遠い過去のことになった感がある。「トマソン」を提唱し、「路上観察」の世界を牽引した赤瀬川氏も先月亡くなった。しかし「トマソン」は今もひっそり街のなかに存在し続けるし、なにせ「無用の長物」なので、ひっそりと消滅したりもしているだろう。それは今までもそうであったし、なぜ今さら「トマソン」なのかと訊かれても、よい答えは見つからない。とりあえずこれから、「トマソン」に限らず、路上での発見を紹介していこうと思っている。
写真は、私が初めて見つけた懐かしい「トマソン」。ビルの壁に家の影がきれいだな、と思ったが、肝心の「家」がない。影だけ残して消えた。「トマソン原爆タイプ」と赤瀬川氏が呼んだものだ。
【編集部】