ドラマがあった

読売旗小学生野球

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2014年10月13日更新

 10月4日・5日、台風の気配を感じながら全試合が終わるまでは雨が降ることのないように祈りながら、浅井町野球場で少年野球を観戦していた。少年たちのユニフォーム姿に、グランドのニオイがよみがえる。ユニフォーム姿がしっくり馴染んでいる奴が巧く、そして強い気持ちを持つプレーヤーだ。僕はずっとそう思っている。
 生涯に残る思い出のシーンがある。それは、繰り返すデジャヴのようで、同じように誰のなかにもあるのだと思う。しかし、それはひとり一人の少年のなかの固有のものである。そう思えるような試合の連続であった。
 第33回読売旗争奪小学生軟式野球大会(滋賀県軟式野球連盟・読売新聞大阪本社主催・滋賀県青年読売会など協賛)。各地区で予選が行われ、勝ち抜いた南郷里地区スポーツ少年団(長浜)、青山スポーツ少年団(大津)、伴谷少年野球(甲賀)、草二リトルメッツ(草津)、五個荘野球スポーツ少年団(東近江)、八幡シャークススポーツ少年団(近江八幡)、多賀少年野球クラブ(多賀)、治田西野球スポーツ少年団(栗東)、リトルオール高島(高島)の9チームが戦った。優勝は五個荘野球スポーツ少年団が伴谷少年野球を4対3で破り2年連続の優勝を果たした。
 2日間、僕はほとんどの試合を観戦しながら、五個荘の写真を多く撮っていた。涙のシーンが二度あった。
 4日、八幡シャークススポーツ少年団との試合。五個荘は後攻、六回表を終わって3対2で負けていた。90分ゲーム故、六回裏の攻撃で決着する。寄木真里君(6年)がランニングホームランを放った……。背番号8、逆転の口火を切った。寄木君はホームべースを踏みベンチに帰って来る時、涙をぬぐっていた。ダイヤモンドを走りながら泣いていたのだ。自分のミスで八幡シャークスに1点を奪われ、チームへの責任をこの一打で取り戻すことができた喜びの涙だったのだろう。寄木君には観戦者にははかり知れない気持ちの動きがあったに違いない。
 5日準決勝、多賀少年野球クラブとの試合。序盤から緊迫するシーソーゲームだった。4対4引き分けによる抽選勝ちだった。勝ちが決まった瞬間、涙がこみ上げる。五個荘は先攻だった。3対2で負けていたが、五回表に逆転した。1点リードのまま六回裏。同点に追いつかれたが、多賀の逆転を許さず守り切った。誰かが「なに泣いてんにゃ。これからやぞ」と言ったが、止まらなかった。抽選勝ちとはいえ、彼らが涙するそれほどの試合だった。勿論、決勝戦でも涙はあったに違いないが、僕の見たそれは二度だった。
 優勝したチームだけではない。参加した全ての選手に生涯繰り返すことになる様々な場面があったに違いない。そして、試合は読売旗争奪小学生軟式野球大会だけではない。これからの生涯に、例え野球から離れたとしても、幾度も経験する試合がある。悔しくて泣くのか、嬉しくて泣くのか。そのどちらも精一杯だったればこそ流れるものがある。多分、それは真剣に精一杯取り組んだ者にしか解らないものだ。
 試合が終わるまで雨らしい雨はなく、風らしい風が吹くこともなかった。

編集部

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