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水色の炎

近江高校野球部の甲子園出場に期待す

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2014年8月15日更新

 何かを忘れないでおこうとするとき、人の一生より何倍も長持ちする石や金属に文字や記号を刻む。そして大抵は、何年かすると、そこに何が記されているのか知ろうとする者にだけ、過去を、大切なものを語ってくれる。
 2001年8月、甲子園球場は水色のユニホームに注目していた。私立近江高等学校(彦根市松原町)野球部が滋賀県初の決勝進出を果たした夏だった。その姿に鮮烈なイメージを抱いた人がいた。詩人であり作詞家の阿久悠さん(2007年没)。阿久悠さん作詞の歌を聴いたことがない人は、おそらくいない。レコード大賞受賞曲でいうと、「また逢う日まで」「北の宿から」「UFO」「勝手にしやがれ」など。『宇宙戦艦ヤマト』のオープニングとエンディング曲、『名探偵コナン』の「ぼくがいる」の作詞も阿久悠さんだ。
 阿久さんは、野球好きとしても知られ、当時スポーツ新聞に『甲子園の詩(うた)』という連載をしていた。そして、近江高校が決勝進出を決めた翌日、一篇の詩が掲載されたのだ。『水色のほむら』である。
 近江高校の体育館側通用門を入ってすぐ左に石碑が建っている。石碑には一篇の詩と当時の部員たちの名が刻まれている。
 最初の部分を碑から写してみる。

炎と書いて
ほむらと読む
水色のほむらは
青い炎のことをいう
近江高

きみたちはまさに
この夏 甲子園を愛する人たちの
心を焼いたほむらだった
静かで 小さくて 目立たず
しかし 気がつくと
大きな大きな存在となり
誰の目にも 遠くからでも
あれが近江だと知られる
強い力を発していたのだ

 かっこいい……。水色のほむらは、今、近江ブルーと呼ばれる鮮やかな色だ。しかし、阿久悠さんが書いた『水色のほむら』を知る人がほとんどいないのは何故だろう。 
 今年、近江高校は夏の甲子園に出場する。再び『甲子園を愛する人たちの 心を焼いたほむら』となる阿久さんのこころを動かした水色の炎を観てみたい。僕は、今、ものすごく期待していたりする。

 

雲行

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