ソラミミ堂

淡海宇宙誌 XX 幸せの経済学

このエントリーをはてなブックマークに追加 2012年2月7日更新

 年明け早々、大規模な「居合わせ」がありました。
 東近江市で映画「幸せの経済学」の上映会。六か月の赤ん坊から八十歳のお爺さんまで会場一杯百八十人。すごい熱気。それもそのはず。あるご年配など「命がけで来た」と仰った。そんな中、みんなで話し合いました。「幸せとは何だろう」って。
 地球の全部を巻き込んで、巨大に複雑に展開する経済。一人一人の手には負えないようだけれど、その始まりは、とってもシンプルなんだと思う。つまり、同じ地球の同じ時代に「居合わせた」隣人同士が、それぞれの幸せを叶えるために、お互いに足りないものを交換すること。一人ではできないことを「仕合わせる」こと。なぜなら―

生命は
自分自身だけでは
完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

吉野弘「生命は」

 そう、僕たちはみんな「命欠け」。欠けているから補い合って「仕合わせる」。そして世界は——。

世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄

吉野弘「生命は」

 

 皆が互いに「命欠け」だと確かめること。互いに満たしあう者同士だと気付くことから、僕たちの経済学は始まるのです。


引用:吉野弘『吉野弘詩集』角川春樹事務所 1999

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