ソラミミ堂

淡海宇宙誌 VIII こたつに飼われる

このエントリーをはてなブックマークに追加 2011年1月4日更新

 わが家の猫は名前をマメといいます。三年前、日もとっぷりくれてからひとり帰宅し、暗闇のなかで難儀して鍵をまわして玄関をガラリと開けた拍子に、夜の黒さよりひときわ黒いかたまりがサッと足もとをすり抜けたのにおどろいて、あわててかまちをかけあがって明かりをつけたらニャアと鳴いたのが出会いでした。
 三年前のマメがすっかり大豆になったいま、朝、ストーブに火を入れて、右を見て、左を見たらもうその前に陣取っている。そうして、昼日なかからごろりぺたりと、およそ動物の寝相といったらこれだけございますという見本をひとしきり披露してくれるわけですが、その仕上げには、四肢を伸ばし腹をあからさまにして、人の子であってもなかなかできない立派な仰向けの寝姿を見せてくれます。
 「おまえ、もと野良猫の野性はいったいどこへいったの」とあきれてしまうわけですが、それはそのまま僕らが天から問いかけられていることでもあるなと気づきます。
 猫はその生存の戦略上、人間と利害の一致をみたのでだんだん家畜化したものですが、僕ら人類もだんだん家畜化しているのだという話があって、それは自分で自分を家畜化するので自己家畜化だと言われています。
 ストーブという文明技術に保護されそしてこたつに飼われて、時ならぬフルーツなどをもぐもぐとほおばっている、この貧弱な現代人たった一人のためにも莫大なエネルギーを使ってしまっているわけで、もう幾つ寝ると親方地球から速達便で送られてくるリストラ通知を受け取った時、ひとりでは火をおこすこともできなくなった僕ら人間を、果たしてマメは見捨てずにいてくれるのか!?

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