邂逅するソラミミ堂 21 ブジネスチャンスがきた
新社会人たちにならって、ひとつ誓いを立ててみた。
よし、きめた。俺はこれから立派なブジネスマンになる!
なんだいさっそく誤植じゃないか。おいおい駄洒落かまじめにやれ! と叱られそうだが、本人いたって真面目なのである。
「BUSINESS(ビジネス)」よりまず「BUJINESS(ブジネス)」を世に押し広げたいと思うのである。「ブジネス」とは「無事の経済」のことである。
我々が親しんでいる「ビジネス」ということばは「busy」というその語源からして忙しい。忙しいのは「急がしい」。つまり「ビジネス」は、速いこととか新しいこと、めずらしいことを身上とするいとなみである。
つづりは同じ「share」であってもビジネス界の「シェア」というのは「ゆずり分ちあう」シェアであるより「先んじて独り占めする」シェアである。
そんなわけで、今や株式市場の取り引きはコンピューターが一千分の一秒単位で売ったり買ったりしているそうだ。
心配なのは、「ビジネス」はその性格上、日々めずらしいあたらしい事が起こらなければ、あるいは事を起こさなければ発展しないという点である。「有事の経済」なのである。
なので「ビジネス」の行きつくところ、最悪の場合、それは例えば戦争になる。「ビジネス」を否定するものではないが、その点自覚しておきたい。「ビジネス」がふだん追及しているのとは対極にある価値に根差した営みをこちらにおいて、照らし合わせてみたいと思う。
成長ではなく成熟を、急がず慌てずゆっくりと、めずらしさにはあたりまえさを、目新しさには変わらなさを、美辞(ビジ)麗句にはくらしことばを、コンマ一秒には千年を。
さいわい僕の周りには、立派な「ブジネスマン」がいる。
山河大地に根を張りながら、草木虫魚と語らいながら、田畑を守りし、山に木を植え、文化を受け継いできた人たちだ。
いまに至る前千年といまから始まる後千年を、じぶんにかかわりある時間としてはっきりとイメージしている人たちだ。
「ブジネスチャンス」はそこにある。