ソラミミ堂

邂逅するソラミミ堂17 不思議の川

このエントリーをはてなブックマークに追加 2015年12月9日更新

イラスト 上田三佳

 芹川はとても近いので、七つになる娘とでも散歩で行ける。
 そろそろ雨になりそうだから、ちょっと散歩に行こうか、芹川まで。と言って誘い出した。
 今日の散歩は、気持ちよく晴れていてはいけないのです。
 アメノウオが、さんらんのために、びわこからそじょうしているかどうか、たしかめにいってみることにしたのだから。
 アメノウオって、な に?
 アメノウオは、さか な。あめのさかな。
 あめのさかな?
 あめのさかな。
 そしたらあまい?
 あまい。
 あめやったら、とけ る?
 とける。おひさん にあたったらとけ るから、はれたひは でてこない。
 えー?
 えー?
 ほんまー?
 ほんまー?
 空想の博物誌を創作しながら、川を横目に、土手に沿って歩いていると、いた、いた。
 おおきいアメノウオ!
 一般にビワマスと呼ばれるアメノウオ(アメノイオ)はサケ科サケ目。川で多くは生まれ、琵琶湖へ下ってそこで育つ。成魚は産卵期になると、大雨が降るのを待って、群れをなして生まれた川へ遡上する。だから「雨の魚」。でも、とろけるようにあまくてうまいのは事実。
 追いかけっこをしている二匹はオスとメス。元気いいのもいるけれど、ボロボロになって横たわり、死んで沈んでいるのも多い。
 みんなタマゴを産めたのかなあ。
 今度はもっと上の方まで、自転車でついて行ってみようか。タマゴを産んでいるところまで。
 あちらの浅瀬で、一匹、トンビにつつかれている。トンビの横で、サギが順番待ちしてる。
 買い物のおばさんが自転車をこいで行く。おじさんがジョギングしている。おばあさんが、犬の散歩をしている。
 川のように、しずかに不思議が流れている。
 いまの、あのこはお ともだち?
 しらないのかな?
 おしえてあげる?
 きょうはひみつに しとこっか。

 

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