五色のいなり寿司

いなり寿司専門店 扇

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2014年1月3日更新

 いなり寿司とは、甘く煮た油揚げの中に寿司飯(酢飯)を詰めたというシンプルなものだが、いなり寿司専門店「扇」で食べたいなり寿司は、いなり寿司と名のってはいるが全く違ったものに思えた。加えてにんまりと嬉しくなるくらい旨い。
 油揚げの色が五色。黄金、抹茶、一味、ゆず、竹炭、どれも自然からいただいた色で、陰陽五行の木火土金水に由来する。
 寿司飯は金胡麻、黒胡麻、ちりめんじゃこの3種。更に、梅わかめいなり、しゃけいなり、とりそぼろいなり、しば漬いなり、山椒いなり、わさびいなりなど、そのバリエーションは35種に及ぶ。
 日本にいなり寿司専門店は数々あるが、ネットで検索したところ、これだけの種類と油揚げに色を付けるという発想を実現したのは、多分「扇」だけではないだろうか。

 オーナーの澤順子さんは、「少し前までは、いなり寿司はごく普通に家庭で作って食べていたものです。それぞれの家の味や、母の味があったと思います。それに、いなり寿司はみんなが好きですね。今ではほとんど家では作られることがなくなり、それならば何処にも置いていないようなものをと思ったのです」と話す。
 実際にテイクアウトが多いのも、扇のいなり寿司が食卓を彩る食べ物として受け入れられているからだろう。そして実は、テイクアウトが多い理由にはもうひとつある。ギフトとして用いられているのだ。オシャレなギフトボックスに詰め合わされたそれは、ひとつ一つフィルムで包まれ、おおよそいなり寿司らしくない。一見、洋菓子のようだ。ギフトボックスはネイビーとピンクの2種類(別売)。僕が買って帰ったのは16個入り2 240円(税込)。「えー、これがいなり寿司ですか、驚きですよ」というスタッフの様子に、にんまりとなった。ギフトボックスの幸運に恵まれたのは2人。「ひと口サイズなのがいいですね。ひとりで10個は食べられます」「お揚げが乾燥するんだけど、フィルムが巻いてあるから、おいなりさん独得のしっとり感があっていいですね」「いろいろな種類があって楽しいです」「これは、贈ると喜ばれるだろうなぁ」など、無言で仕事をしなければならない職種の僕らにとって賑やかなひと時である。しばらく、お使い物は決まったなという感があった。

 話が後になったが、扇ではホテルのロビーのような店内でゆっくり食事をすることができる。例えば、「いなりランチ」は、いなり寿司5個・お吸い物・おかず4品で840円(税込)。注文を聞いてから作るので、少し時間がかかるというが、ゴージャスな店内でのひとときは少しも苦にならないだろう。
 五色のいなり寿司、ホテルのロビーのような店舗を創造した澤さんに小一時間お話を聞いて、その中で最も印象に残ったのは「先様のご迷惑にならないものをお贈りする」という言葉だった。確かに納得がいった。

いなり寿司専門店 扇

滋賀県長浜市大辰巳町3-5 美石ビル1F
TEL: 0749-68-3870 / 営業時間10:00~18:00
火曜日定休(12月31日・元旦は予約の方のみ、2日3日は休み)

いなり寿司セット(いなり寿司2個、お茶)380円、五色衣24個入り3,024円・三段重36個入り7,350円
注文を聞いてから作るので、予め電話注文しておくと便利。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

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