こごみのおひたしに感動する日
ウッディパル余呉 田舎料理バイキング
まさに「山笑う」季節のなか、車を走らせた。お目当てはウッディパル余呉のレストラン、「田舎料理バイキング」だ。昨年から始まった週末限定の食事で、野菜を主役にした郷土料理が15種以上並ぶ。余呉町の主婦4人が、食材の使い方を、おばあちゃんたちに学びながら日々研究を重ねて、調理している。
チーフは、京都出身で7年前に余呉に嫁いできた高山康美さんだ。高山さんはアパレル会社に勤務し、百貨店で接客を担当していたという。
「漬物は買うものだと思っていたし、畑でとってきたものには虫がついているし……、あまりにも食べるものが違って驚きました」。
嫁いできた当時を考えると「ありえない」状況ばかりだったそうだ。それがお姑さんから保存食のレシピを学ぶようになり、余呉の味覚にどんどんなじんでいった。
「大根なら漬物や煮物に、乾燥させて切り干し大根にしてと、捨てるところがまったくありません。田舎の料理って無駄がないし、無駄とされがちなところにおいしいところがあるって気づいたんです。そしてそれを代々受け継いできているところがすごいんですね」。
高山さんは何より、余呉の空気と水がおいしいという。だからおいしいお米と野菜ができる。「パスタとかフレンチはいつでもどこでも食べることができます。でもここで、そのときにしか味わえないものがあるんです」。
さて、田舎料理バイキングだが、あざみとニシンの炊き合わせ、野蕗の佃煮、ぜんまいの煮物など山菜料理が多く並んでいた。私は初めて食べた「こごみのおひたし」に感動した。山菜にありがちなえぐみがなくて、ほうれん草のような味わいだった。きっとアク抜きなど随分と下ごしらえに手間暇がかかっているのだろうと思った。
これからの季節は、豆類や青い野菜を使った料理が多くなるそうだが、「余呉では冬に収穫した大根は、雪の上で干して乾燥させ保存しておきます。冷たい雪の上に置くことで甘味が増して煮物にするとそれはおいしいですよ。干し大根の煮物もそろそろ出番ですね」と教えてくださった。
料理のおいしさは、下ごしらえで決まる。土地土地で独特の手間暇のかけかたがある。だから、余呉には余呉の味が生まれるのだ。「こごみのおひたし」ひとつ……、空気も水も、かけていただいた手間暇もまるごと全部、味わいたいと思うのだ。
ウッディパル余呉 レストラン
滋賀県長浜市余呉町中之郷260
TEL: 0749-86-4145
田舎料理バイキング 1,000円
毎土日祝日 11:00〜14:00開催
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【編集部】