漂泊の料理人、おすすめはチキンカツ

ばがぼんど

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2010年4月15日更新

青木大和さん

 長浜駅近くの静かな路地裏に洋食店「ばがぼんど」はある。店名からイメージするのは、宮本武蔵を主人公にしたあの有名漫画。戦国好きのオーナーなのかなあなんて考えていた。
 迎えてくれたのは青木大和さん。がっしりとした体格とりりしい風貌、聞けば長く空手をされていたそうで、名は体を表すんだなあーと、納得した。
 チキンカツ、メンチカツ、海老フライ……、お品書きには定番の洋食が並ぶ。
 大和さんのおすすめはチキンカツ定食だ。「料理の道を歩んでまだ数年、今は基本に忠実に作ることを心がけています」という。ほうれん草のおひたし、もやしとえのきの炒め物、水菜と大根のサラダに続き、ドミグラスソースがたっぷりかかったチキンカツが2枚…。これにご飯と具沢山のおみそ汁がつく。ソースはドミグラスソース以外譲らない、注文を聞いてからしかパン粉をつけない、「何よりおなかいっぱい食べてもらいたい」。ふと「質実剛健」という熟語が浮かぶ。『飾り気がなく真面目であり、かつ心身ともに健康で強くたくましい様子』を意味するこの言葉が、大和さんの人柄にも料理にもぴったりくる。
 そんな大和さんを支えるのが、補助としてお店に立つお母さんだ。奥伊吹でギャラリー「川野辺」を営んでおられ、素朴で独創的な食事を出してくださることでも知られている。大和さんにとっては母という存在でありながら、料理の世界においては大先輩なのだ。ただし、そこはそれぞれのポリシーがある。基本に忠実であろうとする大和さんに対して、手元にある食材を駆使しながら臨機応変に柔軟に仕上げていくのがお母さん。「意見が合わなくて衝突してばっかり」、何処も同じである。

ばがぼんどの料理の楽しみは、器にもある。お母さんから譲られたセンスなのだろう。店舗は20年以上前、喫茶店だったものをほぼそのまま使っている。

 「どれだけ主張しても、僕にとってはあくまでも母の料理が世界で一番だということはわかっているんです」。大和さんの言葉だ。そういうコトを真っ直ぐにいうことができる人も少なくなった。お母さんにもおすすめを尋ねてみた。「カニクリームコロッケですね。クリームがね、本当になんというか、まろやかで…、太鼓判を押します」。チキンカツで十分お腹はいっぱいだけれど、カニクリームコロッケも食べてみないわけにはいかない。私も食べるコトに関しては「質実剛健」なのである。
 ところで、店名のばがぼんど。漫画とは関係はなく話せば長い物語になる。ばがぼんどは英語で「vagabond」と綴り、「流離い者」とか「漂泊者」を意味する。「僕にはぴったりです」なんて大和さんはいう。質実剛健な流離いの料理人……。
 母の料理の世界で、自分の世界観を構築する「vagabond」なのだろう。名は体を表すだけではない。
 

ばがぼんど

滋賀県長浜市北船町5-1 / TEL: 090-3493-3606
営業時間 12:00〜17:00 / 不定休

チキンカツ定食1,000円、カニクリームコロッケ定食1,500円、メンチカツ定食1,000円、豚生姜焼定食900円など。
夜は予約制(和食を中心とした創作料理)。
店の離れには茶室を改装した座敷もあり、個室としての利用も可能。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

椰子

DADA Journal 内の関連記事
スポンサーリンク
関連キーワード