鮮やかな食材と近江牛の炭火焼き
炭火焼 沙斗羅
「彦根冬の食」の季節である。
三大和牛ブランドのなかではもっとも歴史の長い「近江牛」や、江戸時代には将軍家へ献上された「鴨」、滋味豊かな食感が特徴の「近江シャモ」をはじめ、彦根(近江)名物の食材を使った特別メニューや冬に相応しいオリジナル料理を味わっていただこうと生まれた食のイベントで、今年で9年目になる。主催する彦根観光協会のホームページを見ると、「名物や名所は時代によって変化する」とある。「彦根冬の食」もその内容は毎年、変化している。パンフレットには、それぞれが趣向を凝らした市内の18店舗が並んでいる。そのうちの一店、「炭火焼 沙斗羅(シャトラ)」を訪ねてみた。
リバーサイド橋本通りとしてリニューアルした新しさと懐かしさが調和する商店街の一角で、昨年12月、「沙斗羅」は開店20周年を迎えた。県内では珍しい本格炭火焼料理の店で、「彦根冬の食」に参加するのは、今年が初めてである。
「彦根で食事をするなら、一度は、近江牛の本当の美味しさを五感で味わってほしい」。
オーナーの飯田智輝さん(57)の言葉だ。「沙斗羅」の冬の食は、ランチとディナーで異なった近江牛料理をメニューに組み込んでいる。
ご自身も食べ歩きが好きだという飯田さんが、「どこにでもあって、どこにもない店を持ちたい」という夢を形にしたのが「沙斗羅」なのだそうだ。その思いは、店のあらゆるところに反映されている。特に、備長炭を使った炭火へのこだわりは語りつくせないほどで、近江牛の本当の美味しさを引き出す、最高の熱源であるという。
「鉄板では油を引いて調理するため、どうしてもそれが素材の持ち味を抑えてしまいます。その点、炭火だと余分な風味がつかないばかりか、表面はパリッと中はジューシーに仕上げることができるんですよ」。
素材への熱伝導を考慮して、鉄ではなく竹の串を使っていること。ハンバーグだけは、最初に鉄板で焼き上げてからオーブンで仕上げるのが一番甘味を引き出せること。炭火串焼はお客さんの食べるペースにあわせて焼き上げていること。日々、微妙に変わる炭火の調整に一切の妥協をしないこと……冬の食では、それらを全部楽しんでいただきたいと、「沙斗羅」の20年間の魅力を結集させたのだそうだ。
「お客さま自身に店内で過ごす時間を大切に感じていただける、そんな場所でありたいです。何時間居てくださってもかまいません。どんな料理が目の前に並ぶのかわくわくしてもらって、最後に満足していただけるのが一番嬉しいです」。
厨房から聞こえてくる炭火の音がある。料理を演出するのは、厳選された食材と飯田さんのこだわりだ。味覚はもちろん、盛りつけの見た目や香りも、店内に流れるゆっくりとした空気と時間も、全てが重なりあってその日のメニューとなるのが「沙斗羅」である。
炭火焼 沙斗羅
滋賀県彦根市河原2-2-34 / TEL: 0749-24-5315
ランチ 11:30〜14:00(前日までに要予約)
ディナー 17:30〜23:00(L.O.22:00)
定休日: 月曜日
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
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