地域探索(まちの見え方) 1

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年1月10日更新

 少し前と言っても半年ほどだが、滋賀大学経済学部の近藤紀章先生の授業で学生の方々と話す機会があった。DADAジャーナルについても説明をした。「新しいまちがいろいろできて、かっこいいまちもたくさんあるなかで、僕らが、何をどういう風に語ることができるかということがとても大事だと思います」、「もしも、不思議なものや面白いものを発見して書いてくれたら、DADAに掲載するよ」と話した。2017年12月……。本当にレポートが届いた。ウェブサイトに掲載したDADAの過去記事を読み、実際に訪ねたレポートもあった。何十年とこのまちで暮らしている者にとっては、まちの見え方が明らかに異なり新鮮だった。僕は、掛け値なしに今年一番嬉しかった。僕を喜ばせるツボを心得ているようだ。本文は、編集部でタイトルと一部小見出しを入れた他は、できるだけ原文のまま掲載した。

この顔を見ていただきたい

 脱力してしまうような、気の抜けた表情である。ついしかめっ面になってしまうここ最近の炎天下の中この顔を見つけると、つられて頬が緩んでしまう。しかしこの顔とじっと見つめ合うと、何かを訴えかけられているようにも見えれば、私を通り越しただただ青空を見つめているようにも見える。対面するたびに、毎回同じであるはずなのに、変わった表情を見せてくれるのだ(以下親しみを込めて、「この顔」を「彼」とする)。
 なんとも不思議な表情をした彼は、滋賀大学へ登校する際の道端に見ることができる。彼を発見したのは、滋賀大学に入学したばかりの雨の日だった。傘を差し長引く雨にうんざりしながら登校していると足元にいる彼に気付いた。口元が緩み、ニヤリとしてしまう。これが彼との始まりだ。以降登校の際には毎回彼の表情をチェックする習慣が出来上がった。
 側溝の蓋と思われる彼は、不定期に移動する。道路には蓋が5枚ほど等間隔で並んでおり、このうちの1枚が彼である。定期的に側溝の掃除が行われるらしく、彼は時々居場所を変える。のんきな顔がある日突然消えたかと思えば、2つ奥の蓋の上に現れる。そんなゆるさとミステリアスを兼ね備えている彼だからこそ、毎日見ても飽きないのだ。
 彼の発見は日常に密かに佇むおもしろさ、楽しさをうまく見つけ出すきっかけとなった。時には空を見上げたり、ちょっと小道に入ってみたり、しゃがみ込んでみたり、そんな気ままな登校もたまには良いのかもしれない。

(N.I)

 

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