地域探索(まちの見え方) 1
少し前と言っても半年ほどだが、滋賀大学経済学部の近藤紀章先生の授業で学生の方々と話す機会があった。DADAジャーナルについても説明をした。「新しいまちがいろいろできて、かっこいいまちもたくさんあるなかで、僕らが、何をどういう風に語ることができるかということがとても大事だと思います」、「もしも、不思議なものや面白いものを発見して書いてくれたら、DADAに掲載するよ」と話した。2017年12月……。本当にレポートが届いた。ウェブサイトに掲載したDADAの過去記事を読み、実際に訪ねたレポートもあった。何十年とこのまちで暮らしている者にとっては、まちの見え方が明らかに異なり新鮮だった。僕は、掛け値なしに今年一番嬉しかった。僕を喜ばせるツボを心得ているようだ。本文は、編集部でタイトルと一部小見出しを入れた他は、できるだけ原文のまま掲載した。
お化けに会いに
私がまだ小学生くらいの年頃に、ある噂を聞いた。「あそこは夜になるとお化けが出る」。子供を近づけないためなのか、本当にそれが出るのかはわからない。
お化けが大の苦手で、でも一度は訪れてみたいと思っていたその場所を確認すべく足を運んだ。もちろん昼の間に。
その場所は多賀町内からサービスエリアへ向かう道の途中にある、多賀SLパーク跡地だ。昔の蒸気機関車がそのままの形で残されており、外観だけは何度も目にしていた。実際に近づいてみると思っていた以上に大きく、中をのぞいてみても風化することなくきれいなままであったことに驚いた。
しかし実際に私がそこを訪れてみて見つけた不思議なものは、機関車ではなかった。より奥に進んだときに見つけた、公園とそこにあったベンチだった。それらは草むらに隠れており、廃墟化していた。噂ではそんなものがあるとは聞いていなかったため、見つけたときは不気味で不思議に思えた。公園はまだしも、私がより不思議でならなかったのはベンチだ。なぜか檻のようなものの中にあり、1つのベンチがぽつんと置いてあった。バスの待合室であったのかと推測しても、近くに停留所は見当たらない。ベンチは何十年も前に使われなくなったはずなのに、周りと比べてみてやけにきれいだった。ならば、ベンチは後付けで檻の中に何かを飼っていたのか……と様々な角度から思案してみるも、答えを知っている者は私の周りにいない。
取材を終え、公園の出口に向かうとあるものを見つけた。遠目から見るとほこらのようだった。すでに噂のお化けと廃墟化した公園とベンチによって不気味さを感じていた私。写真を撮るとすぐさま道路があるほうへ駆けていった。しかし後から見返すとただの養蜂箱のようだった。なぜあそこに、一つだけぽつんとあったのかはわからないが。
今回、私の町にある不思議なものを取材して、観光名所ではなくても楽しめるところが地域にはあるのだなと感じた。答えが周知ではない分、じっくりその歴史や背景を思案することができる、そのことがより私を夢中にさせてくれた。授業で学んだ日本人の観光に対する姿勢、つまりガイドブック片手に再確認するだけの旅とはまた違う面白さを味わえるのが地域探索なのだろう。また時間があるときにふらっと出かけてみるのもいいかもしれない。
(R.K)