政所 茶レン茶ー 誕生!!

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2012年12月17日更新

 「宇治は茶どころ、茶は政所(まんどころ)」滋賀にはこう歌い始める茶摘み歌がある。
 政所は東近江市の東部、旧永源寺町を構成した7集落のひとつだ。愛知川の源流域にあたり、川の両岸の斜面に民家と茶畑の鮮やかな緑が広がる美しい集落である。穏やかな日に訪れた稀人にとって、川底は白く、流れは清らかである。
 近江の茶といえば土山や信楽が有名だが、政所も「幻の銘茶」と評され彦根藩や朝廷へ献上されるほどのお茶を生み出した土地だ。谷筋ならではの朝霧や昼夜の寒暖差が茶作りには好条件なのだ。「朝霧と朝日が当たるところは全部茶畑にしてしまい、家は日当たりが悪い」という笑い話を耳にするほどだ。また風味の豊かさは茶樹にも秘密がある。現在、日本の栽培茶樹の約9割は栽培用に品種改良された「やぶきた」だが、政所の茶樹はすべて在来種である。冬の豪雪にも耐え抜く粘り強いこの木だからこそ、渋さの後にふっくらとした甘みの広がる味になるのだという。樹齢300年の茶樹があるほど、政所の人たちの手で大切に守られてきた茶ではあるが、過疎が進む中で跡継ぎはおらず、茶業従事者は年々高齢化する一方だ。

 ここにこの秋「政所茶レン茶ー(ちゃれんじゃー)」が誕生した。メンバーは滋賀県立大学の学生や院生、先生や社会人の合わせて10名。ふざけた名前のようだが、本人たちはいたって本気で、もうそれぞれのカラーまで決めてしまった。もちろんレッドやイエローではなく抹茶色や萌黄色といったお茶カラー。任務は政所で茶づくりしながら政所の暮らしや文化を学び伝えていくことだと思っている。
 きっかけは今年9月に行われた「地域再生システム(特)論」という授業だった。フィールドワークである地域を実際に歩き、そこの抱える課題を探り、課題の解決策を提案するのである。初めて政所を訪れた日、茶農家の方に集落を案内していただきながら、茶にまつわる様々な話を聞いた。「先祖から守ってきたものを守りたい。『政所』の名前だけが残って茶が残らないのはみじめだ」という言葉に茶への誇りが込められていた。しかし集落を歩くと斜面に雑草が生え荒れた茶畑が目に入る。体力的にも手がまわらないのだという。「あそこなら好きにしていいよ」との言葉にメンバーの目が輝き、すべてが動きはじめた。

 11月、さっそく茶畑を借りての活動が始まった。初日は草取り。たかが草取りと思っていたが、普段農作業をしていないとろくに草も取れない。それでも休憩時間には川縁にシートを敷いて、丁寧に湯冷ましで入れたお茶をいただく。これぞ「茶ミット(ちゃみっと)」。師走16日には畑に落ち葉を敷きつめにいく。雪が降るようになれば、家の中でゆっくりおばあちゃんたちにお茶の入れ方を習おう。春がくれば茶摘みができる。その時までにコスチュームの菅笠と襷と地下足袋を用意しよう。そして私たちの作ったお茶を飲みながらあちこちで「茶ミット」をやりたい。稀人の、夢はふくらむばかりである。

青磁

スポンサーリンク
関連キーワード