日本唯一 諸芸上達を願う「扇おみくじ」

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2012年12月15日更新

扇おみくじと布施博章宮司

 彦根で一番古い神社として知られる千代神社。この社は、古くから芸能をはじめとする諸芸の神として信仰を集めており、歌舞伎や落語をはじめとする古典芸能にたずさわる人々のみならず、多くの芸能・芸術関係者が足を運ぶ。
 創立年代は定かではないが、社伝によれば孝元天皇の皇女・倭迹迹姫命の降誕によって勧請し、履中天皇の御代に再建されたという。社伝に基づくならば、弥生時代に成立した古社であると考えられる。祭神は天宇受売命と猿田彦命。天宇受売命は天照大神が天の岩戸に隠れてしまった際、天の岩戸の前で舞を舞って、天照大神を誘い出した神である。主祭神である天宇受売命が芸能の始祖神とされていることから、千代神社も芸能・諸芸の社として広く親しまれているのである。
 その千代神社で11月1日より新たに授与されるようになったのが「扇おみくじ(1体800円)」だ。幅3寸(約9センチメートル)、絵柄が9種類。表には藤や牡丹などの美しい花が描かれ、裏には「大吉」「中吉」「吉」のほか、諸芸成就についての文面が記されている。扇は京都の扇専門店「舞扇堂」製で、本物の扇のように閉じたり開いたりできるなど、随所にこだわりが隠れた本格的なものだ。千代神社の布施博章宮司は「扇形のおみくじは、日本中でもここにしかないのではないでしょうか」と話す。11月3日に行われた「小江戸彦根の城まつりパレード」で井伊直政役を務めた俳優の細川茂樹さんも同神社を参拝後、このおみくじを引いたという。

 通常のおみくじは、引いたあと境内の樹木やみくじ掛などに結びつける風習があるが、扇みくじは扇形のため、結びつけることはできない。布施宮司は「家に持って帰って神棚にあげていただくか、お稽古事の稽古場などに飾っていただきます。1年経ったら当社に持ってきて奉納していただければ、お焚き上げさせていただきます」と教えてくれた。
 扇おみくじは、基本的に芸能・諸芸を祈願するものではあるが、習い事の上達、技能の向上など、幅広くスキルアップを願う人が吉凶を占い、今後の糧にする目的で引くといい。「芸能」の言葉を使うと自分とは無関係に感じるが、仕事や趣味など、諸芸上達やスキルアップを望む場面は誰にでも多く訪れる。たとえばこの文章を書くための文章力や、紙面に載せる写真の撮影技術、インタビューの技術など、向上したいスキルや技能は星のようにある。それらの上達を願って美しい扇のおみくじを引く。手にして楽しく心躍る、特に女子には嬉しいおみくじではないか。
 もうひとつ、おみくじは家族や友人の代理で引くこともできるのだという。相手のことを心に思い浮かべてよく念じ、おみくじを引き、中を見ずに相手に渡せば、相手の運勢を占うおみくじにもなるのだ。日本でここにしかない希少価値のある扇おみくじ。彦根土産として渡せば誰もが笑顔になるのではないだろうか。

千代神社

滋賀県彦根市京町2丁目9-33
TEL: 0749-22-1237

祭神 天宇受売命(アメノウズメノミコト)・猿田彦命(サルタヒコノミコト)

扇おみくじ 1体 800円

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

みなみ

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