映画『家』、醒井ロケに200名が参加
2012年10月26日から28日までの3日間、豊郷、米原、彦根の3地域で、秋原北胤監督の次回作品『家』の滋賀ロケが行われた。秋原監督の映画撮影は、東京から最低限のスタッフと共に現地入りし、地元有志の協力を得て実施するのが特徴。ボランティアスタッフがロケ地の選定から小道具の準備、エキストラの募集、当日の交通整理まで多方面にわたって全面的に協力する。衣装や記録用動画撮影、スチール撮影など、普段の仕事でつちかった能力や、趣味・特技を生かしたプロ顔負けの技術を駆使して、その土地の人々が映画撮影に貢献している。今回の滋賀ロケも「彦根を映画で盛り上げる会」をはじめ、地元有志や滋賀ロケーションオフィスの全面協力を得て実現した。
原作に選ばれた『家』は、明治44年(1911)に島崎藤村が発表した長編小説。藤村自身を投影した小説家を主人公に据え、生家や姉の嫁ぎ先を舞台に、ふたつの旧家の没落を描いた作品だ。秋原監督は作品を大胆にアレンジ。時代を昭和30年代の設定に変更し、旧家崩壊の過程で再構築される「家族」に光をあてた映画にするという。主演は西村知美さんが務め、崩壊していく家と家族の愛の間で揺れる難役に挑戦するほか、松田洋治さん、大谷みつほさん、元SDN48の木本夕貴さん、中山卓也さんなどが名を連ねる。
豊郷ロケでは、「金亀」「大星」などで知られる岡村本家が西村知美さん演じる橋本種子の“家”として選定されたほか、彦根では袋町のクラブがロケ地として選ばれ、撮影が行われた。
3日間のうち最大規模となったのは、醒井でのロケだった。久保田呉服店が出演者の家として選ばれただけでなく、中山道・醒井宿に大量のエキストラの手を借りて、“周囲が見えなくなるほどの雑踏”を創りだしたのだ。滋賀ロケーションオフィスをはじめ、各地で募集に応じたおよそ200名の参加者が醒井に集った。地元の方々も多数参加されたほか、八百屋、酒屋、醤油屋など出店に並べる商品提供にも協力するなど、町を上げて映画撮影に取り組んだ。参加者たちの衣装やメイクは自前。昭和30年代を意識しつつ、思い思いの衣装や小道具を用意して撮影に挑む。レトロなワンピース、和装、バンカラ風の学ランまで、多彩な人々が集う 繁華街 が出現した。
撮影はおおまかな立ち位置や動きを決めることから。「カメラを見ないように」「自然な動きで」など、撮影ならではの注意を受けながら動きを確認していく。西村知美さんら役者陣も入り、さらに動きやセリフをテスト、ようやく本番となる。2時間弱で撮影は完了。ひとつのシーンを作り上げた充足感と共にこの日のロケは終了した。
秋原北胤監督の『家』は来年5月公開予定。今回のロケに参加したエキストラ、ボランティアスタッフの名前はすべてエンドロールに登場するという。湖東・湖北で撮影した映画『家』の完成に期待したい。
【みなみ】