彦根にて映画撮影はじまる

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 米原市 豊郷町 2012年8月17日更新

 2012年6月、彦根ビバシティシネマにて上映された『一遍上人』。この作品を撮った秋原北胤監督が次回作を準備している。タイトルは『家』、島崎藤村の同名小説を映像化する予定だ。
 一本の映画を撮るにあたり、複数のロケ地で撮影を行うのが秋原監督の流儀だ。スタッフは極力少なく、地元の人々に全面的に協力を依頼し、みんなで作品を作り上げていく。監督は自らの映画作りを「大人の学園祭」と呼ぶ。7月13日、監督はロケ地のひとつとしてすでに決定している彦根、米原に足を運び、ロケーション・ハンティング(ロケハン、下見)を行った。主人公の住む“家”に、豊郷の「岡村本家」が選ばれたほか、作品の中で重要な意味を持つ店舗や梨畑など、数カ所でのロケがほぼ決定した。
 秋原監督が目指すのは「作ると見るの一体化」。映画を見てくれる人のいるところで、映画を作る・撮るということだ。通常は先にロケを行い、ロケ地の人に映画館に足を運んで上映を見てもらうという形式を採っていた。つまり“作る”を先行させて、作った人たちに“見て”もらう形だ。しかし彦根・米原では事情が違う。秋原映画のロケ実績はないものの、すでに『一遍上人』を上映しており、多くの人が足を運んでいる。2012年7月段階で『一遍上人』を上映した映画館は21館あるが、千人以上が映画を楽しんだのは4館。彦根以外の3館は映画のロケを行った地域であり、ロケ地でないのに千人を動員したのは彦根だけだという。秋原監督も「前代未聞です」と驚きを隠せない事象が発生している。つまり、彦根・米原では映画を“見た”人たちと、映画を“作る”という初めての形式にチャレンジすることになる。監督も「今回初めて、すでに映画を見てもらっている人たちと一緒に作品を作ります。今までにない経験。どんなふうに広がっていくのか楽しみです」と新作に思いを馳せる。
 あらかじめ監督の作品を見て、既にイメージ共有ができているということは強みにもなる。自分たちがかかわる映画がどんな作品に仕上がっていくのかを常にイメージしながら、役者として、裏方スタッフとして参加できるからだ。仕上がりのイメージや上映時の雰囲気を知っていることを、監督は「出口意識がある」という。出口意識を持ちながら、入り口(作品)作りに参加する。初めての経験が『家』の撮影を通じて始まることになる。「“おもしろい作品を作りたい”という気持ちが大切です。強い思いを共有しながら、一緒にいい映画を作りましょう」と秋原監督。映画の撮影は秋頃を予定しているが、準備は着々と進み始めている。
 次回作『家』は1960年代後半をイメージした作品になる。彦根・米原での撮影は10月後半を予定。エキストラとして映画に登場する役者、裏方として撮影に協力するスタッフを共に募集しているほか、時代設定に合う大道具・小道具の提供依頼も始まる予定だ。

 

秋原北胤監督

東京大学文学部卒業。大学時代は運動会硬式野球部に在籍。1991年より番組プロデューサーとして、多くの吹き替え番組、情報番組を制作。 1993年4月に世界初のインタラクティブドラマ『ゲーム・ザ・ヘブン』を制作。1996年から博報堂に転じ、博報堂電脳体に配属。2001年よりネット映画をプロデュースするようになる。2004年劇場公開作品制作に転じ、以降年1本ペースで作品を発表、2012年公開の『一遍上人』より、監督名を秋原北胤と改めた。次回作は島崎藤村の『家』を映画化。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

みなみ

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