更新する山を目指して!

薪遊庭

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2012年1月13日更新

村山英志さん

 「薪 売ります」。
 旧愛東町の田園地帯にこんな看板が立っている。薪(まき)を専門に販売する「薪遊庭」である。
 私の場合、薪は郷愁を誘う。祖父母の家に五右衛門風呂があり、薪割りを手伝うことがあった。実に懐かしい……。薪は思い出の中に存在する。
 薪とは燃料となる木材のことを指す。薪遊庭では、東近江市の山々から伐採した木を、代表の村山英志さん(47)らスタッフが専用の機械を使って薪割りをし、乾燥させ販売している。伐採しただけでは薪にはならないのだ。
 「薪に適しているのは、楢や樫、桜や欅などの広葉樹です。燃やしたときに木が燃え盛るのではなく、赤くいこった状態が続くんです。いこりは遠赤外線の効果で、暖かさが長続きします。逆に針葉樹は火はつきやすいけれど燃え尽きるのも早いので、火付け用として使います。桜や欅は独特の香りがあって好まれますし、木の特徴を生かして使い分けます」。
 良い薪の条件は乾燥していることだ。木が水分を吸い上げない冬場に伐採し、夏場に乾燥させる。一度乾燥させれば、保管時に多少雨が当たっても大きな支障はないという。
 村山さんが薪の普及に熱心なのは、里山の保全活動で山の現状を知ったことが大きい。

 「広葉樹は20〜30年成長すると酸素の放出が少なくなります。この頃に木を伐っても、切り株を残せば芽が出るので、また成長していく。切り株から出た芽さえあれば1本の木は100回更新できます。更新ごとに木の呼吸が活発になり、酸素が増えます。つい数十年前まで暮らしに必要な燃料は薪で、人間が山に入って木の更新に関わることで生態の循環が成り立っていたんです」。
 時々聞く、広範囲に渡る松枯れなどは、山に入らず木を伐らなくなってしまったことも、原因だそうだ。昔は山に頻繁に入っているから虫がついた木を見つけたら伐採し、被害の拡大を阻止できたのだ。「近隣の山々を『更新していける山』にしていきたいと思っています。私たちは薪を販売していますが、本来なら住んでいる近くの山の木を使ってもらうのが一番なんです」。
 薪遊庭の事務所には薪ストーブがある。部屋中がぽかぽかと暖かい。暖炉と違い木をくべるところに窓があり、これが薪を無駄なく効率的に使える仕組みだ。火を見ていると飽きることがない。
 「癒されたり、元気がわいてきたり……人間の本能的な部分に触れるんでしょうね」。
 薪遊庭は、薪を普及させるために、薪が燃料となる薪ストーブをまずは広めようと薪ストーブの取扱い、設置の施工をしている。さらには薪ストーブの開発までも手がけられるようになったそうだ。
 エアコン、ストーブ、床暖房……。今様々にある暖をとる選択肢に「薪」が浸透すれば素敵だと思う。

薪遊庭

滋賀県東近江市鯰江町西小松1443
TEL: 050-5802-8964 / 村山さん携帯: 090-3353-2084
スタッフは常駐していないので、事前に電話で連絡のこと
営業時間 9:00〜17:00 / 定休日 火曜日

薪1kg 50円〜。木の種類はいろいろある。配達もしている。エリアに応じて配達料が加算される。近隣地域は無料。薪ストーブの相談、設置についても対応している。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

いと

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