河童に出会う日
お会いしたお二人は、お揃いのTシャツを着ていた。やんちゃそうな、でもどこか憎めない表情の河童が描かれている。お二人は河童でつながる間柄なのだ。
8月23日にひこね市文化プラザでミュージカル「瓶ヶ森の河童(しばてん)」が上演される。浅野政季さん(58)は上演する劇団「新生ふるきゃら」のプロデューサーであり、川﨑敦子さん(45)は彦根公演の実行委員長を務めている。
ミュージカルはこんな筋書きだ。
舞台は、幻の山・天狗岳と幻の沼・ケエラヌ沼。そこには河童と共に日本で絶滅した多くの生き物たちが人間に知られることなくひっそりと生きている。それを知ったテレビ局が秘密を暴くために乗り込んできた。
四国でも特に高知県での河童をしばてんと呼ぶ。実際に高知に残る伝承を元にアレンジした脚本なのだという。
川﨑さんは普段は学童保育や読み聞かせなどに携わる、自称「妖怪好き」。学童保育の指導のなかで、子どもたちが妖怪に手紙を出すなど、妖怪と疎遠になっている現代っ子たちに興味をもつ仕掛けづくりなどもしてきた。
「彦根なら芹川の河童がいたり、河童にまつわる話は全国いろんなところにあります。昔は妖怪ってとても身近な存在だったと思うのです。そして『ここは河童が出るから近寄ったら危ない』というように妖怪を介して子どもたちを守ってきたんじゃないでしょうか。子どもたちが河童について思うときに、自分のふるさとを思うようになったらいいなと思っています」
川﨑さんの妖怪好きは、学童保育などの活動を通して多くの方が知るところとなり、全国を巡業する「新生ふるきゃら」のミュージカル「瓶ヶ森の河童」彦根公演が決まったという。
「このミュージカルの表のテーマは自然と命。環境が破壊されていくなか、多様な生物が共存していくことについて投げかけています。そして裏のテーマは家族です。単なる子ども向けの物語ではなく、妖怪、お芝居、自然環境、音楽……いろんな切り口があるから、ぜひ大人にも見ていただきたいですね」とプロデューサーの浅野さんは説明する。
「本物に近い河童に出会っていただけますよ」と浅野さんは笑う。
「本物」の河童とは何だろう。それについて考えてみるとき、伝承ではなく、今を生きる私たちと妖怪の新しい関係が生まれるのかもしれない。
夏の終わり、河童に会いに行こう。
ミュージカル「瓶ヶ森の河童」
日時 8月23日(火) 17:30開場18:00開演
会場 ひこね市文化プラザ グランドホール
大人3,000円、子ども1,000円、大人+子ども3,500円
お問い合わせ 090-4287-7738(「瓶ヶ森の河童」彦根公演実行委員会)
チケット取扱
ひこね市文化プラザ、ひこね市民活動センター、彦根市男女共同参画センターウィズ、ビバシティ彦根・アルプラザ彦根サービスセンター
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【いと】