余呉の14年、三代目の梅の木
余呉湖畔の直売所「余呉町はごろも市」に立ち寄ったときのことだ。レジ前の小さな瓶に目がとまった。ラベルには「梅エキス」とある。チラシに梅エキスは青梅を煮詰め、濃縮したもので『効き目は梅干しの30倍』と記されていた。梅干しなら日本人にはお馴染みだ。
梅エキスを作っておられるのは、町内の畑野佐久郎さん(77)、崇子さん(72)ご夫妻だ。70本の梅の木を管理し、青梅を収穫し梅干やジャムなどに加工している。梅エキスはそのひとつだ。
畑野さんにとって梅の栽培は容易ではなかった。余呉町役場の職員を経て町長を務められた畑野さんは、町内での畑作振興のため自ら実験的に梅を植えたのが始まりである。14年前のことだった。雪の重みで梅の幹が裂けるという被害に続けて遭ったが、植え替えながら辛抱強く育ててきた。今、畑に植わるのは三代目の梅となる。
「獣害に対応できる作物を作ろうと梅を選んだ訳ですが、結果として豪雪地帯の余呉では果樹は無理だとわかりました。でもせっかく育てた梅ですから無駄にしたくはなかったのです」。
梅エキスは、梅の名産地で知られる福井県の三方の梅作り名人から学んだのだという。
「摘んだ青梅をおろし果汁を布ぶきんで搾り出し、鍋で焦げ付かないように注意し煮詰めていきます。すべて妻との手作業で、100%無添加、純粋青梅だけのエキスが完成します」。毎年30グラムの瓶を100本ほど仕上げる。一瓶に約1.5キログラム分の青梅が使われている。
爪楊枝の頭にひとすくいが1回分の目安だ。真っ黒いエキスは、口に入れた直後はとてもすっぱいのだが、後味は甘酸っぱい梅の旨みが広がる。濃い〜!という感じだ。その濃さがじわじわ体に効いてくるような気がする。
「梅はアルカリ性の食品ですから、血液の流れを良くする効能があると聞いています。また食あたりや水あたりにもいいようで、海外へ旅行されるときに携帯される方もおられます」。
余呉には春が訪れたばかりで、白い花を咲かせた梅の木々が連なっている。
「梅ジュースも作るんですよ、孫に飲ませてあげるんです」。
じきに青梅の収穫の時期がやってくる。ご夫妻にとって、嬉しく大忙しの季節の到来である。
梅エキス 30g入り 1,500円
- 余呉はごろも市で販売
滋賀県長浜市余呉町下余呉1938
TEL: 0749-86-3312 / 営業時間10:00〜16:00 / 定休日水曜日 - 畑野さん宅への直接注文も可能
滋賀県長浜市余呉町今市547 / TEL: 0749-86-2046
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
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