一期一会の盆梅のために

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2011年1月14日更新

長浜盆梅展は今年で60回を迎える

 引き締まるような冷たい空気の中で鉢の梅が花開く。明治天皇の行幸にあわせ建てられた慶雲館のおごそかな雰囲気が風情を高めている。長浜の新春行事「長浜盆梅展」は今年60回を迎える。期間中、約300鉢が入れ替えながら展示されていく。
 華やぐ主役を支える人がいる。小川喜弘さん(46)、山田朋美さん(35)だ。盆梅展の梅の育成管理を専門とする長浜観光協会の職員さんである。
 「年に一度、最もきれいな姿を多くの人に見てもらう梅だからこそ」一年を通して細やかな手入れと見守りが不可欠だ。展示されるのは約300鉢だが、「地植え」と呼ばれる観賞用に育てられている木は2000本ほどもある。

小川喜弘さんと山田朋美さん

 「半世紀以上続く盆梅展の梅は長浜の財産です。ある年だけ花を咲かせたらいいのではなく、来年も再来年も咲いてもらうための手入れでないといけません。生き物ですから同じように育つ年はありませんが、それゆえに奥深い魅力を感じています」。
 職員となって18年の小川さんの言葉だ。専門的な知識、技術、そして経験が必要だと、一言で片付けるのは簡単である。華やかな舞台の裏はたいてい、計り知れない苦労がつきものだ。
 山田さんはこの仕事に就いて2年目になる。以前は介護の仕事をされていた。「前職との共通点は命、でしょうか。どうしたら命を輝かせることができるかと考えています」と話す。
 小川さんは元警察官、おふたりとも全くの異業種からの転身だった。小さな体から想像できないが、山田さんは学生時代柔道の全国大会で準優勝している。小川さんも剣道の腕前は相当なものと聞く。人でも、梅でも、向かい合うものへ礼儀と敬意を欠かさない。武道をたしなんでこられたおふたりは、そんなところが似ている。

一年を通して細やかな手入れと見守りが不可欠だ

 盆梅展の目玉の一鉢は、樹齢400年と伝わる「不老」だ。今にも折れそうな枝に満開の花を咲かせる様子はまさに不老……。
 「400年前に生まれた梅が、今もこうして花を咲かせている。これ以上に良い盆梅はないでしょう。我々は盆梅の作り手といえますが、それ以前に何人もの作り手がいらっしゃったから今の盆梅があるんです」。

 一期一会という言葉がある。彦根藩主井伊直弼が茶の湯で到達した精神で、『茶会に臨む時、その機会を一生に一度のものと心得て、全身全霊で誠意を尽くせ』という意味をもつ。私たちと盆梅との出会いもまた、一期一会。おふたりは誰よりもそれを知る人である。

 

長浜盆梅展

会場:
慶雲館(長浜市港町2-5)
期間:
1月20日〜3月10日/観覧時間 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
2月10日からは夜間ライトアップ開催のため20:30(入館は20:00)まで
入館料:
500円(小中生200円)

お問い合わせ
長浜観光振興課  TEL: 0749-62-4111(代)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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