寅年の寅薬師

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2010年3月7日更新

無量寺

 彦根方面から湖周道路を南下し、そろそろ能登川にさしかかるところ「薩摩町」の信号が見えてくる。右に折れると、臨済宗の寺院「無量寺」がある。ここには12年に一度、寅年にだけ開帳される「寅薬師如来」が祀られている。
 ご住職の横山宗裕さんによると、薬師如来の台座に虎の文様が彫られていることから、寅薬師と名づけられたそうだ。
 「薬師如来像というと薬つぼを持っておられますが、この薬師様にはないんです。一般に薬つぼをもたない薬師如来は相当古い時代に彫られたものと考えられています。そして古い仏像には台座や光背はないものなのです。江戸時代に仏像に台座や光背を付けるのが流行ったことがあり、それに合わせて据え付けられたようです。ですから寅薬師と呼ばれるようになったのは江戸時代以降でしょうね」と横山さんは推測する。

写真提供: 無量寺

 そもそも寅薬師は、まだそのように呼ばれる以前、今から500年以上前に同じ町内の善照寺に安置されていた。もともと無量寺も善照寺も天台宗の寺院だったが、それぞれが改宗されたことにより、同じ町内として関係の深かった無量寺に薬師如来が祀られるようになったと伝わっている。
 さらにその後、薬師如来は薩摩町とその隣町の柳川町の秘仏として祀られるようになる。詳しいいきさつはわかっていない。つまり無量寺には寺のご本尊である阿弥陀如来と、集落の仏様である薬師如来が祀られた。人々は自分たちがお守りするお薬師様を親しみを込めて「寅薬師さん」と呼ぶようになった。
 ちなみに寅の月は3月である。御開帳が寅の年の寅の月ではなく、11月なのは、かつて農作業が忙しかった時代の名残りで、農閑期を見計らってのことだという。
薩摩・柳川の両自治会が主催し、地域が一体となって、無量寺の周囲を清め、12年に一度の法要が営まれてきた。それは今も変わらない。 
 町に縁がなくても、拝観することはできるのか、実は気になっていた。「もちろん、是非、いらっしゃってください」との横山さんの言葉に安心する。信仰心より好奇心が先だつ未熟者である。

無量寺

滋賀県彦根市薩摩町1300
TEL: 0749-43-4312

今年の寅薬師御開帳は、11月13、14、15日。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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