図書館 創設100周年

彦根市立図書館

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 2016年4月27日更新


彦根公会堂(写真提供 彦根市立図書館)

 ちょうど100年前、1916年(大正5年)の4月25日。彦根城内堀の端、「彦根公会堂」のなかに設けられた「彦根図書館」が、当時の文部大臣に認可された。滋賀県下で初めての公立図書館の誕生だった。現在の彦根市立図書館である。
 なぜ彦根図書館は創設されたのか。その答えは彦根有志の寄付金によって収集され、現在も彦根市立図書館の特別コレクションとして保管されている「御大典記念彦根開国文庫(以下、開国文庫)」にある。この開国文庫の保管こそが、彦根図書館の主たる設立理由だったとされているのだ。
 開国文庫は、主に「天文十一年葡萄牙(ポルトガル)渡来」以降、「寛永十三年鎖国」「嘉永六年ペルリ渡来」「慶應元年開港勅許」「明治三十二年の条約改正施行」を境として区切った各時代の外交や、外国の事情を記したものなど、国内外の史料で構成されている。

昭和2年移転後の図書館(彦根市本町 / 写真提供 彦根市立図書館)

 幕末、開国の条約を結んだ藩主・井伊直弼公が桜田門外で暗殺されて以後、彦根は不遇の時代を送ったとされる。天皇の意にそむいて開国の条約を結んだ逆賊と貶められていた直弼公を、むしろ開国に導き今日の繁栄の基をもたらした恩人として顕彰しようとする動きは、明治10年代から旧彦根藩士を中心に行われていた。
 開国文庫の目的もまた、直弼公の顕彰にあった。開国という決断に踏み切った直弼公の考えた「開国」とは、「世界」とは、どんなものだったのか。そうしたことを理解するための史料を揃え、直弼公の遺徳とともにまちの財産にしよう、という人々の熱意によって、開国文庫と図書館は始まった。直弼公の顕彰に値する文庫とするために、どんな書物を集めるか入念な研究が尽くされ、収集の計画がされたようだ。
 図書館創設以後、彦根藩の重臣や旧家からも書物や文書の寄贈を受けるようになり、現在も彦根市立図書館には貴重な史料が所蔵されている。昭和2年には独立館を新築し、移転。この時から専任館長が置かれ、貸し出し制度も始まったそうだ。戦時には、空襲などで失われてしまうことのないよう、蔵書の疎開も行われた。貴重な史料を出自として始まった彦根図書館は、現在でも辞書や郷土資料の棚が充実しており、当初からの伝統が感じられる。彦根の歴史を調査研究する市民の団体「彦根史談会」も、昭和16年に図書館で発足した。

「御大典記念彦根開国文庫」目録写しより

 戦後は、農村地区の読書傾向の調査と、舟橋聖一の小説「花の生涯」のヒットが図書館にとって大きな意味を持った。GHQの方針で図書館も民主化が推進され、一般家庭で親も子も読書をするような環境づくりがすすめられた。そして「花の生涯」にいたる直弼公再評価の動きも、史談会会員がGHQ元帥マッカーサーと面談、元帥が直弼公を評価する発言をしたことが転換点だったそうだ。
 創設100年を記念し、今年は図書館でたくさんの企画が予定されている。100年間の、彦根のひとびとの思いを考える機会にしたい。

 

図書館創設100周年 行事

図書館100年のあゆみ展

日時: 2016年4月26日(火)~5月19日(木)10:00~18:00
会場: 彦根市立図書館 第1集会室(彦根市尾末町8-1 TEL.0749-22-0649)
休館日: 毎週月曜日、毎月第4木曜日、祝日

そのほか、図書館の貴重な資料やコレクションをテーマにした講演会、それに連動した展示が企画されている。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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