お多賀さん de 朝市に月参り
雪が降るのではないかと心配していた1月のある朝、目ざめると金色の朝日が窓から差し込んでいた。眩しいほどの晴天だった。いそいそとわたしは家を出て、近江鉄道に乗り込み、多賀大社へ向かった。目当ては、境内で開かれている「お多賀さん de 朝市」だ。
多賀大社の大きな鳥居を入ってすぐ、背の高い木々に囲まれた小径沿いに、十数店がテントの軒を連ねていた。この日は、雪が降らなかった代わりに、この冬一番というほどの冷え込みに見舞われた。「寒いですねえ」「ほんまにねえ」それだけで会話が始まる、気のおけない雰囲気がある。あたたかい飲み物で手を温めながら、お話したり、ぶらぶらと買い物をするのが楽しい。多賀の農家さんの野菜を見ていると、隣で「来たよ」「いつもありがとう」と言葉を交わしているのが聞こえた。お参りの観光客とおぼしきひとびとも、足を止めている。
「多賀で朝市実行委員会」メンバーの平塚一弘さんは、多賀町で建築会社を営んでいる。彦根の護国神社で毎月開かれている朝市に出店し、木で作った雑貨などを販売しているうちに朝市の楽しさにめざめたという。「地域密着で、雰囲気もいいし、出店者ともお客さんともコミュニケーションがすごく楽しい。朝市のとりこになってしまったんですよ」と笑う平塚さんは「多賀でも絶対にやりたい」と思うようになり、町制60周年町民企画記念事業として補助を受け、昨年9月から隔月で朝市が始まった。
「まだ始まったばかりの市ですが、長く続けて地域の名物のような朝市に成長していければと思っています。出店数もお客さんも増えていって、いつか門前町商店街の方まで広がって、まち全体が賑やかになっていくきっかけになれば」と平塚さんは夢を語ってくれた。門前町商店街の道路は5年計画で全面石畳化されることも決まっており、それも見据え、まちを盛り立てたいという思いがある。
また、出店者の多くは、多賀をはじめ、彦根など近隣から集まっている。「朝市が、多賀のよいもの、がんばっている人達の発信の場になって、多賀の独自ブランドにもつながっていったらいいなと思います」と平塚さん。
地元の方に遊びにきてもらいたいという思いを持っていた平塚さんは、朝市を開く場所は「お多賀さん以外考えられなかった」という。なにかあると集まるのはお宮さん。それは子どもの頃境内で遊んだ記憶から現在にいたるまで、変わらない意識なのだという。
「お伊勢七度熊野へ三度 お多賀さまへは月参り」。けれど初詣以外、なかなか神社まで出向くことはない。それでも朝市があるなら参れそうだと思う。もちろんこの日も、拝殿で手を合わせました。
お多賀さん de 朝市
4月からは毎月第1日曜日開催(1月のみ第4日曜日)
場所: 多賀大社境内
TEL: 0749-48-7575(平塚)
駐車場は、参集殿駐車場か多賀町役場の駐車場をご利用ください。出店者も募集中。
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【はま】