くすのきの下からはじまった朝市

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 2016年1月28日更新

 彦根市芹橋の美術教室「金亀土濤シブヤ」では、月に1回、小さな市がたつ。庭に佇む樹齢200年のくすのきにちなんで「くすのき朝市」というその市は、かれこれ10年ほど続いてきたという。ずいぶん前からその存在は知っていたのだけれど、今月、初めて足を運んだ。今年の3月の回をもって、くすのき朝市を終えることになったと聞いたのだ。
 終わると聞いてようやく足を運ぶことになってしまった…と思いながら伺うと、朝市メンバーで「パン工房こもれび」の太田裕美さんが笑顔で迎えてくれた。
 古民家の土間から玄関先にかけての小さな空間にお店がぎゅっとひしめき、ストーブのまわりにひとびとが集い、穏やかににぎわっていた。無農薬・減農薬の地場野菜、湖魚のつくだ煮、原材料にこだわった手づくりのお菓子、パン、豆腐、こんにゃく…。他ではなかなか買えないものを求めて、お客さんが訪れる。作ったひとが売っているので、食べ方や作り方をあれこれたずねることができ、楽しい。

太田裕美さん・疋田和子さん

 今をさかのぼること12年ほど前。減農薬で野菜をつくる「疋田農園」の疋田和子さんが、美術教室の渋谷淑子先生にすすめられ、月1回、庭で野菜を売るようになったのがくすのき朝市の始まりだという。渋谷さんは庭に残る樹齢200年のくすのきを残したいという思いから、庭でお米を炊いたり、バームクーヘンを焼いたり、ひとが庭に集う機会をつくっている。「地域のひとに自分がつくってるものを食べてもらいたかったので、いいなと思って」と疋田さん。最初は美術教室に通う子どもたちのお母さんたちが主なお客さんになったそうだ。毎月開催するうちに定着し、8年ほど前からは、日夏町の美容院「モモ」でも「モモの樹朝市」をするようになり、出店者もゆっくり増えていった。
 毎年秋には疋田さんの畑で焼き芋をしたり、冬には味噌づくりをしたりする。そんなことも、「朝市」の活動のひとつなのだそうだ。「食べ物を売るだけでなく、食べ物をきっかけにお話したり、交流する場。一緒に火を囲んで食べてると、仲良くなれるんですよねえ」一緒にストーブの火に当たりながら、疋田さんはそんなふうに話してくれた。

 「10年前とは出店者もお客さんも状況が変わってきて、くすのき朝市は閉じることにしました。これからは、みんなの食材を使って料理教室したり、くすのきの庭に集まるようなイベントをしたり、朝市とは別の新しい方法を探っていこうと思ってるんです。モモの樹朝市は続けますしね」と太田さん。終わるのではなく、新しく生まれかわるのだという。ものを売り買いするだけでない「朝市」だから、形を変えていけるのだなと思った。
 来月13日には、くすのき・モモの樹朝市 感謝祭「七曲がり朝市」がある。朝市メンバーとゲスト合わせて15店舗が出店、にぎやかな市になりそうだ。
 そして今年の秋も疋田さんの畑で焼き芋をする予定という。焼き芋なんて、そういえば何年もしていない。思わず「いいですねえ」とつぶやくと、疋田さんも太田さんも目を輝かせて「ぜひ!」と誘ってくれた。

くすのき・モモの樹朝市感謝祭
七曲がり朝市

日時 2016年2月13日11:00〜15:00
会場 Takumi Apartment(滋賀県彦根市大橋町18)
http://kusunokimomonoki.shiga-saku.net/

くすのき朝市

日時 毎月第2水曜日10:00〜12:00(2016年3月まで)
会場 金亀土濤シブヤ(滋賀県彦根市芹橋2-2-67)

モモの樹朝市

日時 毎月第4水曜日10:00〜12:00
会場 美容院モモ ギャラリー モモの樹(滋賀県彦根市日夏町713-19)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

はま

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