本でつなぐ道

ひこねウモレボン道

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2015年10月30日更新

 今年は、秋の気配がやってくるのが早かった。涼しくなり始めた8月終わり頃から、彦根の中央商店街にある古本屋「半月舎」では、「いつも護国神社でやってるアレ、今年もあるの?」とお客さんに訊かれるようになったという。
 「いつも護国神社でやってるアレ」とは、毎年秋に、半月舎が開催してきた一箱古本市「ひこねウモレボン市」のことだ。読み終わった本、不要になった本(埋もれた本、ウモレボン)をフリーマーケットのように持ち寄って、誰もが一日古本屋の店主になれる。2010年にスミス記念堂で始まり、翌年から飲食や雑貨販売のマルシェも加わって、護国神社境内でにぎやかに行われてきた。「秋には一箱古本市」と楽しみにしているお客さんも増えてきたのだろう。
 「実は、諸々の事情で、今年のウモレボン市はお休みしようと思っていたんです」と半月舎の御子柴さん。しかし何人かのお客さんに「今年はお休みなんです」と謝った頃、ひょんなことから隣の店「The Good Luck Store」と一緒に本のイベントをしようということになった。店先でそんな話していたところに、音楽好きの知人がやってきてライブを担当してくれることになり、同じ商店街に事務所のあるNPO 五環生活の知人が通りかかってNPOぐるみで協力してもらえることとなり…という調子であれよあれよと事が運び、今年は一箱古本市にとどまらない本のイベント「ウモレボン道」として、例年より規模を拡大して行うことになったという。
 「ウモレボン道」は11月1〜23日、中央商店街を舞台に行われる。11月1日に「彦根まちライブラリーこけらおとし植本祭」を皮切りに、五環生活の運営する.5 cafeでは「まちライブラリー」が、半月舎とThe Good Luck Store、&Anneではそれぞれの店にゆかりのある人の本の展示や販売が始まる。
 一箱古本市「ウモレボン市」は、商店街がゑびす講でにぎわう21、22日に開催。同じくゑびす講期間中の22、23日には、彦根出身、現在京都で古本屋「世界文庫」を営むクリエイターの古賀鈴鳴さんによるトークショーも行われる。
 2日には料理本の出版などで活躍する「南風食堂」三原寛子さんによる調理を見ながら食事をいただく会「ライブキッチン」、最終日の夜には彦根ゆかりのアーティスト「かえるさん」と京都で活動する「たゆたう」にしもとひろこさんによるライブと、じつに盛りだくさんのイベントになった。
 私がひそかに注目しているのは、チラシで「カフェや待合室、コミュニティスペースなどの一角に本棚を置き、そこにメッセージ付の「本」を持ち寄り、交換しながら「人」の縁をつむいでいく活動」と紹介されている「まちライブラリー」だ。自分が読み終わった、誰かに紹介したい本をもちより、まちの人たちでまちの中に図書館をつくっていく、新たな取り組みだ。道だけでなく、まちを本でつないでいく、いつかまちが本でウモレるような、そんなことを想像している。

はま

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