まいバーラちゃんの旅

米原市近江公民館

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2015年4月15日更新

 まいバーラちゃんという人形が、旅をした。2012年10月1日から翌年3月31日までの半年間に、11都県19カ所、人の手から手へと渡っていく冒険だった。背中には、まいバーラちゃんを受け取ったひとがメッセージを書くための手帳を背負っていた。
 はじまりは、米原市近江公民館のゆるキャラとして、「まいバーラ」が誕生したこと。バラのぼうしをかぶった丸い笑顔の女の子のキャラクターは、当時公民館に勤務していた藤林麻弥さんがデザインした。「公民館で布遊び教室の講師をしている甲斐沼京子さんが人形にしてくれたんですが、あまりにかわいい出来だったんで、旅に出して、いろんなひとに見てもらおうということになったんです」と、公民館館長の山田裕美さんは話す。
 震災後、暗い話題が多い時期だった。ある日突然、偶然にもかわいい人形が自分の手元にやってくれば、そのひとはきっと笑顔になってくれる。見知らぬ誰かを励ましたいという山田さんたちの気持ちをのせて、まいバーラちゃんは送り出された。

 近江公民館大使を務める俳優、赤井英和さんをスタートに、まいバーラちゃんは旅に出た。そして赤井さんの知り合いへ、そのまた知り合いへ、と渡っていき、最後に、期せずして福島県へたどり着いた。そこで、原発事故のために町を追われ、二本松市で避難所生活を続ける浪江町の人びとに出会った。そして約束の3月31日に旅を終えたまいバーラちゃんは、4月1日、宅急便で近江公民館へ帰ってきた。
 帰ってきたまいバーラちゃんが背負っていたノートには、たくさんのメッセージが寄せられていた。この旅の趣旨を理解し、思いをつなげてくれた人たちのメッセージはあたたかいものばかりだった。なかでも山田さんの心を打ったのは、「ここ浪江町(今は二本松市にお世話になってますが…)が旅の終着地になります。まいバーラちゃんの帰り道もステキなものになりますよーに。帰りたくても帰れない私たちのかわりに無事にお家に帰れるように祈りをこめて」というものだった。「心の中の思いを、人形であるバーラちゃんに託してくれたということに感動して。人形はしゃべれないけれど、そんな力があるんだなと思いましたね」。

 こうしたメッセージを多くの人に知ってほしいと、この旅の記録が絵本「まいバーラちゃんの旅」になった。イラストはまいバーラちゃんの生みの親、藤林さん。文章は米原市出身のシンガーソングライター、真依子さん。
 真依子さんは「バーラちゃんは、山田さんの分身だと思うんですよね」と笑いながら話してくれた。「全国を旅して人びとを元気にするような、エネルギーのあるひと。でも、ご自身は旅に出れないから、思いをバーラちゃんに託したんだと思う」。
 絵本で、まいバーラちゃんは歌ったり踊ったり、出会った人びとに「笑顔の花」を咲かせる。絵本は浪江町の方に寄贈される他、全国から注文が来ているという。人形は帰ってきたが、まいバーラちゃんはこれから、絵本にのって旅をして、たくさんのひとに笑顔の花を咲かせる。

絵本「まいバーラちゃんの旅」

購入・お問い合わせ: 米原市近江公民館
滋賀県米原市顔戸1513 / TEL: 0749-52-3483
書店での取り扱いはございませんのでご注意ください。

藤林麻弥原画展

日時: 2015年5月19日(火)〜26日(火)
会場: 米原市近江公民館

「まいバーラちゃんの旅」ほか藤林麻弥さんの作品を展示。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

はま

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