55回目の巻開

彦根市金沢町和楽会の冠句会

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2014年11月28日更新

 11月3日文化の日、彦根市の金沢町和楽会の「巻開(まきびらき)」がおこなわれた。「巻開」は「冠句開き」とも言い、金沢町和楽会の会員から投稿された冠句のお披露目の会である。
 「冠句」…恥ずかしながら今まで知らなかったのだが、ご存知の方は多いのだろうか。冠句の形は、俳句と同じ上五文字、中七文字、下五文字の「五・七・五」。俳句と違うのは、上五文字が「出題される」ということだ。今回の冠句会であれば「風強し」「菊薫る」「句の浮世」「健康美」「越えた坂」の5つが「冠題」として出題され、1ヶ月ほどの間に会員は投句。それらを出題した先生が選句し、順位とともに発表する会が「巻開」だ。
 今回の投句者は39名、投句数は178句にのぼった。そのなかから上位3句は、上から「天」「地」「人」という賞を受ける。今回「天」を受けたのは、81歳の脇阪武子さん。「風強し 砂丘は今日の 顔つくる」と詠んだ。

 鳥取砂丘の風紋を詠んだのだろうかと思いきや、意外にも雪景色だという。「冬に旅行サークルで鳥取砂丘に行ったんや。雪が降ってバスを降りていくのも大変だったけど、せっかくだから、見に行った。そしたら、雪の粉がふぁーっと舞っていた。それが、頭から離れなかった」という。
 もうひとつ砂浜の思い出があり、「富山行ったとき、とても穏やかな、さーっと遠浅でなだらかな海浜が見えた。若い人がそこを走っていてね。私は足も痛いしもう走ったりなんてしないけど、自分がそこを走っていたらどんな感じだろうと思って」。「風強し」という題からそんな風景が思い起こされ、「今日の顔つくる」と詠んだという。
 ただ見ているだけでは、詩情は生まれない。見たものにひとつ踏み込んでいく、詩的で自由な足を脇阪さんは持っているんだな、と思った。誹諧の世界にくらい私でも、冠句の題に反応する脇阪さんの句の妙はわかるような気がした。
 冠句は、江戸時代初期に誹諧師・堀内雲鼓が最初の五文字を固定して作句上の第にする方法を編み出し、「笠付け」と称したことがはじまりとされる。創始者が京都に住み、子弟も京阪滋に多出したことから、現在も京阪滋に普及しているという。(参考:「冠句のみちづれ」竹山雅一著)
 毎年1回行われる金沢町和楽会の冠句会は、今回で55回目。つまり55年の歴史がある。これからもこの会で毎年、名句が生まれていくのだろう。

はま

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