近江の地獄めぐり
子ども時分、軽業師のそうべえが地獄で大活躍する楽しい絵本「じごくのそうべえ」を愛読していた為か、個人的には、地獄についてのイメージは悪くない。ちょっと行ってみたいな、とどこかで思っていたくらいだ。この春から、近江鉄道多賀大社前駅から多賀大社へと続く門前町で「地獄めぐり」ができると聞き、地獄見たさに、近江鉄道に乗った。
まず、駅前の観光案内所で「開運! 近江の地獄めぐり 多賀観光之御札」という地図を購入。地図には、それぞれ「○○地獄」と銘打ったおもてなしを用意したお店や、地獄の様子をあらわした像を安置する「桜町延命地蔵尊」、江戸時代の地獄絵図を展示する「真如寺」が載っている。お好みの地獄を巡りながら通りを抜け、最後は多賀大社でおみくじを引いて開運という筋書きだ。真如寺の拝観チケットやおみくじ無料券もついている。
酒屋さんで「近江の(地獄ならぬ)地酒めぐり」と称してお酒のオススメを聞いたり、「釜ゆで地獄」三色蕎麦を味わったりと、地獄を楽しみつつ、地獄絵図のある真如寺へ。絵図は春・秋のお祭とお正月の際に本物を展示する習わしとなっているそうで、「昔はお多賀さんに参る人でいっぱいでね、皆さん怖いもの見たさで外から覗いておられました」と、お寺の方に伺う。薄暗い堂内に覗き見る残酷な地獄の風景は、こうして明るい中で見るよりも、もっと恐ろしいものだったのではないだろうか…。桜町延命地蔵尊の地獄像には地獄で罰を受ける人の姿もある。「子どもの頃は、悪いことすると地獄に堕ちてこうなるぞって、大人に言われたものだ」ときく。絵図も像も、どこか素朴な雰囲気をもつ、多賀のまちの人々が守ってきた地獄だ。
地獄に寄り道しながら最後に辿り着いた多賀大社は、なんだかいつもと違って見えた。
開運! 近江の地獄めぐり
お問い合せ: 多賀観光協会
滋賀県犬上郡多賀町多賀389-1
TEL: 0749-48-1553
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【はま】