石窯と薪で作る湖北の特製パン
長浜駅近く、曳山博物館や金屋公園のある長浜大手門通り商店街は、一年を通じて観光客が集まる地域だ。商店街の店には、遠くから長浜に足を運んだ人々と、地元の買い物客が混在している。そんな商店街に、いつもパンを焼くいい匂いをただよわせる店がある。魅惑の香りで人々を引き寄せているのは、商店街の一角にある「手作りパン工房いしがま」だ。店内に並ぶのは、平日は「プレーン」と「ごま」(各630円)の2種類、休日は「くるみ」(840円)が加わった3種類。直径20センチほどの丸くて大きなパンが石窯から取り出されると、芳ばしい香りがふわりと立ちのぼる。
石窯と薪で焼く同店のパンのでき上がりには、温度、湿度、使う薪の種類や乾燥具合など、多くの要因が影響する。天気や薪の状態を常に把握し、微調整しながらパンを作る必要があるのだ。店主の増田宏さんは、「一日一日状態が違うので難しいですが、13年作り続けていても飽きがきません」という。薪の安定確保や煙突掃除など苦労も多いが、毎日楽しみながらパンを焼き続けている。
商店街に「手作りパン工房いしがま」ができたのは2000年8月。京都の山科から長浜へと店を移転し、素朴なパンを焼き続けている。同店のパンは、いわゆる 食事パン 。おかずと合わせ、主食として味わうのがオススメだという。パン好きにはもちろんのこと、「食感が軽い」「胸焼けしない」と、高齢の方やパンがあまり得意でない方、大のごはん党にも受け入れられ、次第に購買者を増やしていった。
パンが最もよく売れるのは春や夏の観光シーズンで、パンを求める人の行列ができるほど。雪が多く、寒い冬の時期はどちらかというと、閑散期にあたる。最盛期には300個ほども販売していたが、最近は「300個焼くのはしんどくて……」と、160個程度に抑えているという。シーズンは早い時間でパンが売り切れ、15時過ぎに店じまいすることもある。
「パンを買う方は常連さんがほとんどです」と増田さんは言うが、その常連は近郊にとどまらず、近畿、東海、さらにはもっと遠くから定期的に店を訪れるという。週に何度も通うご近所さん、遠くから足を運ぶ熱心なファンなど、多くの人々が店を支えている。
おいしい食べ方をうかがった。基本は「買ったその日は、そのまま。翌日以降は軽くトーストする」ことだが、調理をしたり、相性のいいおかずと合わせて食べると、よりパンの魅力を楽しむことができる。フレンチトーストにすれば、牛乳や卵などで作る調味液が吸い込まれてとろりとした食感になるし、チーズを乗せて焼けばしっとり味わい深くなる。スープとの相性もよく、ガーリックトーストにしてもおいしい。
実際にプレーンを食べてみた。とろけるチーズを乗せて焼くと、そのままよりも味わいが増す気がする。外はパリッ、中はフワッの食感も絶妙。次はいつ買いに行こうかなと、もう楽しみにしてしまうほどだ。
手作りパン工房 いしがま
滋賀県長浜市元浜町5-17
平日 11:00〜17:15(売り切れ次第閉店)
土日祝 10:00〜17:15(売り切れ次第閉店)
定休日 不定休(火曜休が多い)
TEL: 090-4496-8730
売り場に並ぶパンは、平日はプレーン630円、ごま630円の2種類。土日祝はくるみ840円も店頭に並ぶ。くるみは、平日でも予約をすれば購入できる。
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【みなみ】