まいばら山猫軒にて

ルッチプラザ内レストラン「粗!一寸」

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2011年2月15日更新

「まいばら山猫軒」の看板

 今、米原市では「米原で親しむ宮沢賢治展」が開催されている。「賢治の世界を読む、見る、表現する」として、パネル展示や、演劇などが市内各所で行われている。
 ルッチプラザ内のレストラン「粗!一寸(そ いっすん)」では展示にあわせて「まいばら山猫軒」がオープンしている。山猫軒は「注文の多い料理店」に出てくる西洋料理店の屋号だ。腹をすかせた狩人が山猫軒を見つけ喜んで入ったものの、お腹を満たすどころか次々注文をつけられ食べられそうになるというストーリーである。
 「まいばら山猫軒」では賢治や作品にゆかりある食べ物から発想を得たオリジナルメニューが用意されている。
 玄米と温野菜のカレー「ビジテリアンカリー」、玄米・はと麦のスープ・野菜コロッケ・ふき味噌に青菜を添えた「賢治定食」、そして天ぷらそばにサイダーがつく「賢治セット」の3種だ。
ヘルシーで体に優しいメニューである。

賢治定食

 「賢治自身はベジタリアンだったそうです。粗!一寸で出している料理ももともと野菜を中心としたものが多く、コロッケなどを山猫軒メニューに取り入れています」とオーナーの青木孝雄さん(62)が教えてくださった。
 私がいただいたのは「賢治定食」。「雨ニモマケズ」の一節「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ」からヒントを得ている。「メニューを考案して初めて玄米を食べましたが、おいしいものですねえ」と青木さんは話していた。白米に慣れた私にも、玄米のぷちぷちした食感と独特の香りは新鮮だった。『一日四合……』。賢治はたくさん玄米を食べていたんだと気づいた。天ぷらそばとサイダーの組み合わせは賢治の好物だったという。

 ところで、「注文の多い料理店」には、次のような序文があることを知る人は少ない。

わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風を食べ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。
わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。(後略)

 私にとって賢治の作品はしばしば幻想的すぎたり、難解だったりして途中で挫折したこともあったが、改めて一言一句を読み直してみようと思っている。
 『きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。』きっとそういう食べ物や飲み物を知っていたり、真に求めていたりする人にだけ、わかる「まいばら山猫軒」があるに違いない。
 序文は『わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。』と結ばれている。

 イーハトーヴは今も憧れの地だ。まいばら山猫軒にてそう思った。限定メニューは2011年2月20日まで。
 すきとおった風を、朝の日光を思い出した。

粗!一寸

滋賀県米原市長岡1050-1 ルッチプラザ2階
TEL: 0749-55-7171 / 定休日 月曜日
営業時間 10:30〜18:00頃
2月20日までは17:00閉店

まいばら山猫軒の限定メニューは2月20日まで。ビジテリアンカリー、賢治定食、賢治セット各600円(各メニュー1日10食限定)、岩手のご当地サイダー「マスカットサイダー」300円

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

椰子

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